最新記事

原発

仏核施設爆発で政府は火消しに躍起

事故直後すぐに「放射能漏れなし」と宣言し、「原子力事故」ではなく「産業事故」扱いにした仏当局の思惑は

2011年10月25日(火)13時26分
佐伯直美(本誌記者)

爆発事故の発生後、コシウスコモリゼ・エコロジー相は直ちに現地へ飛んだ(マルクール、9月12日) Jean-Paul Pelissier-Reuters

 フランス南部マルクールの核廃棄物処理施設で先週発生した爆発事故へのフランス政府の対応は、実に素早かった。事故発生からわずか2時間後にはコシウスコモリゼ・エコロジー相が現地へ飛び、午後には仏原子力安全局が「放射能漏れはない」と、早々に事態収束を宣言した。

 事故が起きたのは、原発で使われたバルブやポンプなど低レベルの放射性廃棄物を処理する溶融炉だった。爆発時には約4トンの廃棄物が入っており、事故で1人が死亡、4人が負傷したが被曝者はいなかった。「これは原子力事故でなく産業事故だ」とマンジャンIAEA担当大使は言い切った。

 政府が火消しに躍起になるのも無理はない。福島原発の事故を機に脱原発へ舵を切ったスイスやドイツとは対照的に、フランスは原子力関連産業を主要産業として保護する姿勢を堅持。一方で安全性向上のため、原発のストレステストを行うよう各国に奨励し、自らも原子炉58基の検査を実施した矢先だった。

 来年の大統領選で野党候補は脱原発を打ち出すかもしれない。性急な収束宣言に後でボロが出れば、再選を狙うサルコジ大統領には大きな痛手になるだろう。

[2011年9月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ支援措置、国連事務総長「効果ないか

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中