最新記事

中東

シリア介入を嫌がるアメリカ国民の本音

「戦争疲れ」が広がるアメリカでは、市民の間でシリアへの軍事介入に反対する声が高まっているが

2012年3月19日(月)18時08分

見えない出口 政府軍による武力弾圧が続くシリアでは、民間人の犠牲者が増え続けている(シリア北部イドリブ、3月14日) Reuters

 アフガニスタンなどでの軍事行動に辟易しているアメリカ国民としては、他の国の紛争にこれ以上足を突っこみたくないということなのだろう。

 シリアのアサド政権による反体制派への武力弾圧を止めるため、米軍を派遣したり反政府勢力に武器を提供するのは反対だ――ピュー・リサーチ・センターがアメリカで行った最新世論調査では、回答者の過半数以上がこう答えた。

 アメリカにはシリアの武力鎮圧に介入する責務はない、と答えた人は回答者の3分の2近い64%。シリア政府軍の残虐行為を止めさせるために空爆したり、反政府勢力に武器を提供することに反対だと答えた人の割合もほぼ同じだった。(1年前の調査では、アメリカがリビアで同様の行動を起こすことについても63%が反対した)。

 同調査では、米軍をアフガニスタンからできるだけ早く撤退させるべきだと答えた人も過半数以上に上った。

イランに対しては他人事じゃない危機感

 ただし、イランの場合は別だ。同国の核開発に関しては、アメリカが性急に行動を起こすことを懸念するよりも、時間をかけ過ぎて核開発を阻止できなくなることを恐れる声の方が多いらしい。今回の調査では、アメリカが様子を見ている間にイランが核開発に成功することを懸念すると答えた人が54%。一方、アメリカが性急に行動することを心配する声は34%だった。

 イランに関する答えには、党派色がくっきり表れている。アメリカが時間をかけ過ぎることを懸念する声は、共和党支持者の間では75%に達する(共和党の中でも「保守派」を自称する人に限れば、81%となる)。しかし民主党支持者の間では、この数字は42%に下がる。

 軍事介入か、平和的解決の道を模索するか――シリアに関しても、国際社会では立場によって意見が分かれている。CBSテレビの報道によれば、シリア介入に慎重な姿勢を見えていた国連・アラブ連盟合同特使のアナン前国連事務総長は、シリアに国連停戦監視団の派遣を決めたという。「情勢に正しく対処できなければ、この地域全体に深刻な影響が及ぶだろう」と、アナンは警告した。
 
GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中