寿命が来たら「赤ちゃん」に戻る...「不死」の生物が持つメカニズムが、人間に永遠の命をもたらすかも
The ‘Immortal’ Animal That Can Cheat Death
科学者がベニクラゲに見出した「希望」
「不死」であるベニクラゲの研究は、単なる生態研究に留まらず、医療などに大きな発展をもたらすかもしれないと科学者たちは考えている。
シュニッツラーは本誌に対して以下のように語った。
「かつて科学者たちは、最終分化した細胞型のほとんどは、それ以外のものには決してなれないと考えていた。例えば、筋肉細胞は他のどの細胞型にも変化できないと考えられていたのだ。しかし、細胞の分化状態は終着点ではなく、環境要因に基づいて変化し得る安定した状態にすぎないのではないかという考え方が、より受け入れられるようになってきている。その意味合いは多岐にわたる。人間の健康に引き付けて考えると、これらの自然界の例は、幹細胞治療の分野において、人間の多能性幹細胞から完全に機能する成熟細胞型を作り出すための新たな解決策となる可能性がある。いつの日か、これらの複雑な分子や細胞プロセスの制御方法を深く理解し、それを医療に応用できるようになるかもしれない」
ミリエッタは本誌に対し、以下のように述べている。
「ベニクラゲは、再生と老化の遺伝的メカニズムを理解するための貴重な手がかりとなるため、科学的に非常に注目すべき存在である。人間においては、あらゆる細胞型になり得る能力を持つ細胞は、主に胚の初期発生段階に限定されている。それに対し、ベニクラゲは完全に分化した成体の細胞を再プログラムし、より柔軟な状態へと戻すことができる。ベニクラゲを研究することで、このような細胞再プログラミングを可能にする遺伝的およびエピジェネティック(後生遺伝的)なネットワークを調べることができる。その生物学的な『不死性』は、効率的なDNA修復および細胞保護システムの存在も示唆している。これらのプロセスがクラゲにおいてどのように機能しているか理解することは、ゲノム維持、老化、組織再生といった、人間にとっても極めて重要な基礎的メカニズムに光を当てることにつながる」
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