廃プラスチックや未利用材が高級家具に...前田技研による廃材を用いた3Dプリンティングが世界を変える
3Dプリントで作成された孚美(フウビ)ブランドのインテリア
<3Dプリンティング技術が、環境問題と製造の課題を一挙に解決し、循環型社会の実現に貢献している>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
プラスチック廃棄物や森林伐採に伴う未利用材の処理問題は、深刻な環境問題の1つだ。大量生産・大量消費の構造を見直す動きが広がるなか、企業にも「つくる責任」「つかう責任」が問われている。
こうした課題に対し、素材の選定から廃棄物の再資源化までを見直す取り組みを行っている企業も少なくない。株式会社前田技研もその1つだ。
大型インテリアも迅速に製造可能に
愛知県岡崎市に本社を置く前田技研は1968年に創業し、鋳造用の金型製作を中心に技術を磨いてきた老舗企業だ。2008年には初めて5軸加工機を導入して、2016年には、DMG森精機製の大型5軸加工機を導入。また、3Dプリンターは、2018年に初めて導入し、2020年には大型3Dプリンター「EXF-12」を導入するなど、さまざまな技術を柔軟に取り入れてきた。
同社が3Dプリンターを導入した背景には、本業の金属加工で行う試作品を最短リードタイムで製作するために、3Dプリンターを活用出来ないかという考えがあった。しかし、異なる材料、製法の違いなどの理由から、顧客の求める要求に3Dプリンター製作品では不足していた。そこで視点を転換し、環境問題が全世界的に焦点となっている中、前田技研としても新たな取組で貢献していこうと考えた。
折しも、環境配慮型の樹脂材料が市場に登場し始めた時期であった。これを契機に同社はサステナブル素材を用いた造形を試行。3Dプリンターが持つ唯一無二の質感とデザインが特徴の表現力に魅了され、「インテリアブランド 孚美(フウビ)」を2023年に立ち上げた。2024年には、カタログ製品として販売開始をして、ホテルの共有スペースや百貨店での販売も実現し、サステナブルな家具や空間製品の製造に着手するなど挑戦を続けている。
製品製作に用いる材料は、様々な環境配慮型の樹脂で、押出成形で使用されるペレット樹脂。3Dプリンターで一般的に使用されるフィラメントに比べて安価で種類も多い。「EXF-12」は造形時間も早く、スツールは約4時間、机の脚も8時間で造形可能だ。サイズは最大1.7メートル×1.3メートル×1.0メートルに対応し、大型製品でも迅速な納品が可能。造形後は自社工場での機械加工にも対応し、一貫した体制での製造を実現している。






