「感じるSDGs」を全国へ──音楽と芸術で命の大切さを伝える「はれる」の挑戦
音楽と表現を通じてSDGsを伝える「エコメロディコンサートキャラバン」子供たちに命・環境・思いやりの大切さを「体験」として届けている
<SDGsという言葉を知らなくても、「体験」は子供たちの心に届く──芸術を通して命や環境の大切さを伝える、一般社団法人はれるの活動が、保育・教育現場に広がりつつある>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
持続可能な社会の実現に向け、SDGsの重要性が広く認識される中、「子供たちにどう伝えるか」は大きな課題となっている。特に保育や幼児教育の現場では、抽象的な目標や概念をどのように子供たちに理解させるか、多くの教育者が頭を悩ませてきた。
そうしたなか、一般社団法人はれるでは音楽や演劇、アートを通じてSDGsを「体験として届ける」べく、歩みを進めている。
芸術は「特別な人」のものではない
芸術による表現教育に20年以上取り組んできた代表のひなたなほこ氏は、2024年にその実践を形にする表現教育団体「はれる」を設立。「芸術は特別な人のものではなく、すべての子供に開かれた学びである」という理念の下、助成金や協賛を基盤に、学校や保育園、自治体、企業と連携して、公演やワークショップ、指導者研修を行っている。
「質の高い教育をみんなに」「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」といったSDGsの目標を活動の軸に、音楽やアートを通じた、誰もが等しく学び、芸術に触れられる機会づくりを目指している。
設立同年にはSDGsをテーマにしたコンサートを開催。「他孫(たまご)コンサート」と題し、「高齢者が他人の孫を応援する」というコンセプトの下、年齢や立場を超えた交流の場を設けた。
また、今年からはアステラス製薬株式会社との協業がスタート。同志社大学の瓜生原葉子教授が提唱し、アステラス製薬でも普及推進に力を入れている「医療のエコ活動(※)」を子供たちにも届けるべく「エコメロディーコンサートキャラバン」と題したコンサートを全国の幼稚園・保育園で開催している。
(※)一人ひとりが健康でいること、医療資源を大切に利用することで、必要な人に必要な医療や革新的な治療法が届けられる社会を目指した活動。

協業のきっかけは、代表のひなた氏が小児がんで亡くなった子供の話を聞き、「命の大切さ」や「命の循環」を子供たちが自然に感じながら、自分の気持ちを言葉や身体、音楽で表現し、人とつながる喜びを感じられるような機会を増やしたいと考えたことだったという。
目標は「医療のエコ活動」の理念を、音楽や物語を通してわかりやすく伝え、子供たちの日常の行動を変えていくこと。コンサートは、子供たちが生まれた環境や家庭の事情に関係なく音楽に触れる機会にもなっている。





