牛乳=骨太は間違いだった! 「牛乳をたくさん飲む国ほど骨折が多い」衝撃の研究結果

2023年3月31日(金)12時35分
生田 哲(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

生まれたばかりの子牛は体重が40kgもあり、2年後には成牛となり、体重500kgに達する。体重は毎日1kgも増える。ウシの子がこんなに早く成長するのは、栄養素が違うからである。そこで牛乳と人乳100g中に含まれる栄養素をくらべてみよう。

タンパク質は牛乳中に3.3g、人乳中に1.1g、カルシウムは牛乳中に110mg、人乳中に27mg、リンは牛乳中に93mg、人乳中に14mgである。そしてカロリーはどちらもほぼ同じ約65kcalである。牛乳は人乳にくらべ、タンパク質は3倍、カルシウムは10倍、リンは7倍も含まれている。どれも骨を成長させるカギとなる栄養素である。その上、牛乳には成長因子と呼ばれるホルモンが大量に含まれている。牛乳の栄養素と成長因子が子牛を急成長させるのである。

reuter_20230331_114438.jpg
牛乳と人乳100g中に含まれる栄養素の比較(出所=『「健康神話」を科学的に検証する』p.265)


5歳から17歳への身長の伸びは戦後もあまり変わらない

牛乳の最大のセールスポイントは、牛乳を飲むと子どもの背が伸びるという主張であるが、本当なのか?

文科省の学校保健統計調査報告書をもとに、1948年から2020年までの72年間にわたる子どもたちの身長の推移を見ていこう(*1)。身長曲線を見ると、この期間、全体として男子、女子ともに身長が伸びた。たとえば、1948年の5歳男子の身長は103.7cmだったが、2020年には111.6cmへと72年間に7.9cm伸びた。17歳男子の身長も1948年の160.6cmから2020年の170.7cmへと10.1cm伸びた。

女子についても同じ傾向が見られる。1948年の5歳女子の身長は102.5cmだったが、2020年の110.6cmへと8.1cm伸びた。17歳女子の身長も1948年の152.1cmから2020年の157.9cmへと5.8cm伸びた。だが、身長曲線をもう少し細かく見ていくと、身長が伸びているのは1948年から1980年までで、これ以後は止まったままである。次に、5歳から17歳への身長の伸びを見ていこう。

reuter_20230331_114621.jpg
牛乳と人乳100g中に含まれる栄養素の比較(出所=『「健康神話」を科学的に検証する』p.267)

男子の5歳から17歳への身長の伸びは1948年に56.9cm、2020年に59.1cmである。1948年から2020年までの72年間で伸びた身長差は2.2cm(59.1-56.9)に過ぎない。では、女子の5歳から17歳への身長の伸びはどうか。1948年に49.6cmだったものが、2020年には47.3cmに縮んだ。驚くことに、1948年から2020年までの72年間に5歳から17歳への身長の伸びは2.3cm(49.6-47.3)縮んだのである。

(*1)学校保健統計調査/年次統計

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中