最新記事
インタビュー

『海と日傘』主演の大野拓朗が語る作品の「日本らしさ」と「観客の想像力にゆだねる」ということ

2025年7月5日(土)09時40分
大橋 希(本誌記者)

――自身の出演作で転換点になったものは?

いっぱいありますが、なかでも蜷川幸雄先生の『ヴェニスの商人』(2013年)に出演したことが役者として大きな転機でした。それまでは見よう見まねでお芝居や役作りをやっていましたが、『ヴェニスの商人』では蜷川組の先輩方に役作りや台本の「読解の仕方」を教えられ、蜷川さんにも厳しくしごかれ、お芝居が一気にうまくなった感覚が自分の中でありました。


舞台は僕にとって「修行の場」でもあります。1つのセリフ、1つのシーンを何百回、何千回と練習して、本番でも何十回と演じる。どんどん追求して、芝居の精度を高めていけるので。

――『海と日傘』は海外での上演を目指しているそうですが、日本らしい作品の受け入れられ方をどう想像していますか。

例えば「間(Ma)」という言葉もそうですが、最近は日本の文化や日本人に対するイメージが世界中の方々に、より強く根付いていると思います。アニメを始めとする文化が好きという方もすごく多い。

僕自身、ブロードウェイやウエストエンド(ロンドンの演劇の中心地)の作品や海外の映画ドラマを見るときに、文化の違いを面白がっているところもある。『海と日傘』も同じく、文化の違いを楽しんでもらえると思います。

一方で、これは夫婦の話であり、病気の妻への思いや関係性などに関しては海外でも同じように感じてもらえるはずです。

本当は英語で全編できたら、より面白いだろうとは思うんですけど。字幕が出ると、お芝居以上にそちらに目が行きがちなので、そこをうまく調整できたら素敵な試みになるんじゃないかな。

――イギリスに拠点を移す計画もそうですが、かなりの努力家では? 例えば昨年6月、アイスショー『氷艶2024』に急きょ代役で出演したときに短期間でスケートと演技と歌を仕上げたのは、かなり大変だったはずで......。

『氷艶』は髙橋大輔さんが主演で、荒川静香さんも出ていらした。僕、スポーツ選手を尊敬しているんです。スポーツ選手をサポートする仕事に就きたいと思って、大学はスポーツ学科に行った。メディカルトレーナーになろうと思っていたので、アスリートへの憧れがすごく強くて。

だから、髙橋さんの相手役として同じリンクの上に立ってお芝居と歌ができるのは「絶対に楽しいし幸せだ。一生の思い出になる」と思って出演を決めました。

オファーをいただいた際は、「滑れなくても大丈夫」と言われました。でも、素晴らしいスケーターの皆さんと一緒に滑りたいと思ったので一生懸命練習して。

努力家っていうことでもないですが、好きだからできるって感じですね。先ほどお話しした、ミュージカルをやりたいと思ってから5年間、仕事の際は自分の運転で移動していましたが、その道中は2時間、3時間毎日ずっと歌い続けていました。ただ歌が、ミュージカルが好きだったから。

スケートも楽しかったから、朝5時から練習して休憩中もずっと練習していました。

――ストレートプレイかつミニシアター系のような『海と日傘』も、ミュージカル『進撃の巨人』のようなエンタメ色の強い作品も、どれも演じていて楽しいですか。

楽しいですね。ミニシアター系のような作品は今回初めてなので、新鮮な体験です。でも稽古の間、ずっと声も張らずに話しているので、そうするとやっぱり歌いたいなぁって思ったりして。車の中で歌ったりしています(笑)。

おかげさまでいろいろな役を経験させてもらい、やっぱりどれも好きだから、これからも幅広く演じていきたいって思っています。

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米1月住宅建設業者指数37に低下、高価格と金利懸念

ワールド

トランプ氏、ハセット氏を「とどめたい」 FRB議長

ワールド

EUがウクライナ早期加盟検討、当初の権限限定 ロ和

ワールド

最高裁、次回判決日は20日 トランプ関税訴訟など重
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 8
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中