「人種の壁」を超えたヒーローたち...大谷とジャッジが示した「多様性の理想」

BRIGHT LIGHTS AND FLICKERING TORCHES

2024年11月14日(木)19時00分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

newsweekjp20241112044027-a1553c707f60d6b0b12fcb0b7d0a380fd18edffe.jpg

ボストン・レッドソックス初の黒人選手ジョー・フォイ(右)(1967年) TOM LANDERSーTHE BOSTON GLOBE/GETTY IMAGES

今回は大谷のチームメイトでワールドシリーズのMVPに輝いたフレディ・フリーマンなど、ほかにもヒーローがいた。私は大谷とジャッジに同情する。彼らは全ての選手を圧倒しなければ、失敗したと見なされてしまうのだ。一方で、2人の苦闘に私は胸が痛みつつ胸が躍った。今日は誰がヒーローになるのだろう。夜空のあまたの星の中から、次はどんなヒーローが生まれるのだろう、と。

ヒトラーがヨーロッパでユダヤ人の大量虐殺を始めようとしていたとき、私の父は、ユダヤ人の子供にもほかの皆と同じチャンスがあるのだと子供たちを諭した。しかし、それからわずか1年足らずで、アメリカは「自由と民主主義」を守るために第2次大戦に参戦。米政府はアメリカで暮らす日本人と日系人12万人を、アメリカの市民権を持っている人さえ強制収容所に送った。


その1年後の1943年、米海兵隊の士官学校で訓練を受けていた父は、同じ士官候補生とたびたび激しい口論になった。父が、クワンティコの海兵隊兵舎の外で日曜日の朝に新聞を売っていた少年と親しくなったからだ。少年は黒人だった。米南部出身のその候補生は、黒人の、しかも子供を、父が白人と同等の存在として扱ったことに激怒したのだ。

私はボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークに歩いて行ける場所で育った。毎シーズン、おそらく10回はスタジアムに行き、1.5ドルで一般入場券(入場はできるが席はない)を買ったものだ。レッドソックスは、メジャーリーグで黒人選手を採用した最後のチームであり、チームの大ファンでラジオで全試合を聴いていた友人の母親が(当時はテレビ中継はほぼなかった)、三塁手のジョー・フォイが黒人だったために、試合を聴かなくなったのも驚きではなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中