「人種の壁」を超えたヒーローたち...大谷とジャッジが示した「多様性の理想」

BRIGHT LIGHTS AND FLICKERING TORCHES

2024年11月14日(木)19時00分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

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2020年の米大統領選でのトランプの敗北に憤慨して連邦議会議事堂を襲撃した支持者(21年1月6日) TAYFUN COSKUNーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

スタジアムに入ると、ボストンの人種意識を個人的に調査するため、黒人の数をよく数えた。2万〜3万5000人の観衆の中で、私が見つけることができたのは、たいてい79人とか86人、71人という具合だった。父の時代のアメリカでも、私の育った35年後のアメリカでも、「誰もがプレーできる」わけではなかった。

しかし、アメリカは当時とは驚くほど変わり、今も変化し続けている。私が生まれた1956年当時、人口の89%は白人だった。私が高校生の頃、好きだった黒人の女の子をデートに誘う勇気はなかった。そんなことをしたら、当時の人種差別的な言い方をすれば「ニガー・ラバー」だった私は、毎日殴り合いのけんかをしなければならなかっただろう。今日では憎悪に満ちたその言葉を使う人はいない。それから20年後、私は最愛の女性と結婚した。彼女は中国人だ。今では「異人種間の」関係は当たり前になっている。今後10年ほどで、アメリカは少数派(マイノリティー)が多数派(マジョリティー)を構成する「マイノリティー・マジョリティー」の社会になり、白人は人口の半分以下になるだろう。


大谷と異人種のバックグラウンドを持つジャッジは、「国民的娯楽」である野球のスーパーヒーローとして全米で熱狂的に受け入れられている。ファンは2人を、チームをワールドシリーズに導いた史上最高の選手であり、ロールモデルとして見ている。「日本人」の大谷、「混血の」ジャッジとして見てはいない。

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