最新記事

ビジネス

26歳社長は「溶接ギャル」 逃げた転職先で出会った最高の「天職」

2021年9月11日(土)16時08分
村田 らむ(ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター) *東洋経済オンラインからの転載

両親は、粉すけさんの付き合う先輩や友達のことを悪しざまに言った。もちろん粉すけさんのことを思って言っているのだが、粉すけさんは、

「自分の居場所を作ってくれた大切な人を、けなさないで!!」

と憤った。

「それで先輩の家に居候して1週間に1回くらいしか実家に帰らなくなりました。先輩の家には食べ物が全然なかったので、実家に帰ったときはとにかく食いだめしました。

駅前でジベタリアン(所構わず座り込む若者たち)をして、友達とどうでもいい話をして、プリクラを撮ったりしてました」

もちろん高校入試もせず、中学校の卒業証書は母親が学校からもらってきた。

高校生の年齢になってからは、ほとんど毎日ゲームセンターに入り浸っていた。

reuters__20210910195625.jpg「ずっとゲームセンターにいたのでいつのまにか従業員とコネクションができて、そのまま店員になりました。それまでは汚いスウェットにキティちゃんの健康サンダルをつっかけた、ザ・ヤンキーという格好でしたが、路線変更してツインテールに猫耳をつけて出勤してました。アニメを見たり、カードゲームをしたり、オタクになっていたんですね」

ゲームセンターでバイトをしているうちに運転免許証が取得できる年齢になった。

福井県では運転免許がないとかなり生活に支障があり、就職にも「免許が必須」である会社が多かった。

「当時付き合っていた彼氏が、ランエボⅦ(三菱自動車『ランサーエボリューションⅦ』)っていう車に乗ってたんです。最初は『うるせえし、乗り心地悪い車』って思ってたんですけど、だんだんと愛着が湧いてきて、自分でも乗りたくなりました。そこでマニュアル免許を取ることにしました」

当時はすでにオートマチック限定免許が定着しており、女性でマニュアル免許を取る人は少なかった。

「両親には、

『マニュアル免許取るなんて、どうかしてるんじゃないの? 軽トラでも運転する気?』

って言われるし、教習所では、

『本当にいいんですか? 途中で変更できませんよ』

って脅かされました」

ただ、粉すけさんは運転はうまく、実技試験ではまったく問題がなかった。

問題は学科試験だった。

「めちゃくちゃ勉強したので、理解はしてるんですよ。でも効果測定の問題って国語力が重要じゃないですか。最後まで問題を読まずに答えを書いちゃうんですよね。どうしても2~3点足りなくて落ちていました」

ランエボⅦを操る

粉すけさんは免許を取得する前にすでにランエボⅦを購入していた。自動車販売会社からは、

「すでにローンで買っちゃったんだから、絶対に免許落ちちゃダメだよ!!」

とプレッシャーをかけられていた。

粉すけさんは本当のギリギリのギリギリで、なんとか免許を取得することができた。

「人生でいちばんうれしかった瞬間でした。免許取るのは苦労しましたけど、取ってからは一度も事故していないし、ゴールド免許なんですよ」

粉すけさんはゲームセンターのバイトをしながら、ランエボⅦを乗り回すようになったのだが、すぐに不満に思うようになった。

「ランエボⅦって燃費が悪いし、保険代も高くて、維持するのが大変なんですよ。ゲーセンのアルバイトだけではすぐにお金が回らなくなりました。

転職しようと思いましたけど、学歴ないですからなかなか難しくて。ここは一発、資格を取りにいこうと思いました」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

農林中金、4ー9月期の純利益846億円 通期見通し

ビジネス

午後3時のドルは155円前半、財務相・日銀総裁会談

ビジネス

日経平均は4日続落、米エヌビディア決算控え売買交錯

ワールド

ウクライナ西部で爆発、ロシアがミサイル・無人機攻撃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中