推し活の危険性...お金ではなく、推しによる自己肯定感が実は危うい
「基本的自尊感情」と「社会的自尊感情」
興味深いのは、著者が彼女の自己肯定感の低さに着目している点である。
自己肯定感(自尊感情)には「基本的自尊感情」と「社会的自尊感情」があり、前者は無条件で自分の価値を認める感情を指す。「生まれてきてよかった」「自分は生きていていいんだ」と無理なく思え、自分のよいところも悪いところも受け入れ、自分を尊重するための感情だ。
対する後者は、他者からほめられたり、成功体験を積み重ねたりすることで得られる感情。他者との比較にもとづく相対的な評価によって高まるものなので、絶対的ではなく変動しやすい。学校の成績や仕事の評価などがそれにあたるが、進学や転職などでステージが変われば、それまで得られていた自尊感情を得られなくなるということだ。
いずれにしても人間の自尊感情は、基本的自尊感情を土台として、その上に社会的自尊感情を積み上げることによって形成されるわけである。
この点を踏まえて注目したいのが、以下の記述だ。
あらためて、【サナ】のケースに当てはめて考えてみたい。彼女はみずから希望した進路に進んだが、納棺師という仕事が社会的自尊感情の形成に結びついていない。なぜなら、彼女を「肯定されたような気持ち」にさせてくれるのは、仕事での評価や成果ではなく、「推し」だからである。「仕事をがんばっている自分が、仕事の現場で正当に評価されたい」という欲求は、本来は仕事でしか満たされないもので、どれだけ「推し活」で充足感を得たとしても、根底から癒されることはない。元来の欲求は、未消化のまま残り続けることになる。(252ページより)





