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推し活の危険性...お金ではなく、推しによる自己肯定感が実は危うい

2026年2月15日(日)16時45分
印南敦史 (作家、書評家)

「死んだのは、私の『推し』に違いない」と確信

納棺師として働きながら推しに勤しんでいた彼女はあるとき、その対象であるwowakaという人物が命を落としたことを知る。「ヒトリエ」というバンドの中心人物として活躍していたボカロPである。

2019年春に全国ツアーを行っていた「ヒトリエ」のメンバーひとりが亡くなったと、匿名掲示板に書き込みがあったのは4月5日のこと。真偽不明のリーク情報にファンの誰もが狼狽するなか、やがてバンドの公式SNSも週末のライブを中止することを発表し、界隈は大騒ぎになったという。

そのとき【サナ】は「誰かが死んだとしたら、私の『推し』に違いない」と確信した。週が明けて詳細が公表されると、予想どおり亡くなっていたのはwowakaだった。死因は急性心不全とされていたそうだ。


「やっぱり悲しかったです。精神的にわーっとなっちゃって。でも、そのとき私はまだ入社して間もない時期だったので、仕事に穴は空けられなかったし、とりあえず仕事はしなくちゃいけないな......、と。それで仕事をして、用事を片付けていたら、2日くらい経ってから冷静になってきて、もうこの世界には生きている意味がないな......、って。もうこの世には用がない、みたいな気持ちになりました。......『推し』の後を追って自殺する、というような劇的な感じではなかったんですよね。引っ越し......みたいな? この世界にはもう『推し』がいないから、もうここには用がなくなったから、じゃあ引っ越しをしようかな、くらいの感覚でした」(236ページより)

「精神的にわーっと」なりながらも仕事をした責任感は評価に値するだろう。しかし、時間の経過とともに希死念慮が芽生えてくる(しかも本人は自殺という行為とは違うものだと位置づける)など、理解しづらい部分もある。

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