斜陽デトロイトは「デジタル」で蘇る──先端技術の集積拠点として台頭

MICHIGAN MOVES UP

2023年3月8日(水)12時40分
ジェイク・リンジマン(自動車業界担当)

「より安全で、より平等で、より環境面で健全な輸送手段を全ての住民に提供することにより、州経済をより強力なものにできると、州知事と業界のリーダーたちは確信している」と、ポールは言う。

ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事は昨年9月、その目的を達成するための「ミシガン未来モビリティ計画」を発表した。この計画は3つの柱で構成される。

1つは、モビリティ産業の雇用を大幅に増やすこと。2つ目は、より安全で、より環境に優しく、よりアクセスしやすい交通インフラを提供すること。そして3つ目は、モビリティと電動化に関するイノベーションとその支援策で世界の先頭を走り続けることだ。

未来のクルマの中核技術

アメリカの自動車メーカーだけがミシガン州で自動車関連のテクノロジー開発に投資しているわけではない。ミシガン州に進出して半世紀以上の歴史を持つ日本のトヨタ自動車は、自動運転車やコネクテッドカーの走行試験場を運営する非営利団体「アメリカン・センター・フォー・モビリティ(ACM)」の創設時から資金を拠出している。

ミシガン州イプシランティにあるACMの試験場には数キロにわたる試験走路が設けられており、5車線4方向のインターチェンジや、高速道路の出入り口なども用意されている。トヨタはACMに対して、17年に500万ドル、21年に600万ドルを拠出している。

ミシガン州では、次世代道路インフラの開発を手がけるキャブニュー社と州政府の協力により、州内のデトロイトとアナーバーを結ぶ高速道路に自動運転車とコネクテッドカーの専用車線を造る計画もある。この次世代道路により、アナーバーにあるミシガン大学のキャンパスと、デトロイト・メトロポリタン空港、デトロイトのミシガン中央駅が結ばれることになる。

ミシガン州は昨年11月と12月にも、州内のさまざまな分野のモビリティ関連プロジェクトへの資金拠出を相次いで発表した。

「自動車メーカーはこの数年、ソフトウエアとデジタルテクノロジーが未来の自動車の中核技術だと考えるようになった」と、S&Pグローバル・モビリティのブリンリーは言う。

「20年頃まで、ソフトウエアで動く自動車はまだ研究段階だったが、今は商業化・実用化の段階に移行しつつある。自動車メーカーはそのプロセスを自社の保有する施設で、そして地理的にも自社の拠点に近い場所で進めようとしている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中