最新記事

温暖化対策

仮想通貨イーサがマイニング時の電力を99%カットへ ビットコインに重圧

2022年9月16日(金)10時40分
イーサリウムのイメージ

時価総額世界第2位の暗号資産(仮想通貨)「イーサ」を支えるブロックチェーン・プラットフォームのイーサリアムは、エネルギー消費を大きく減らし、環境に優しい「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれる新しいシステムに移行しようとしている。写真はイーサリウムのイメージ。2021年11月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

時価総額世界第2位の暗号資産(仮想通貨)「イーサ」を支えるブロックチェーン・プラットフォームのイーサリアムは、エネルギー消費を大きく減らし、環境に優しい「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれる新しいシステムに移行しようとしている。これにより時価総額第1位のビットコインに同様のシステム導入を迫る圧力が増大する可能性がある。

「Merge(マージ)」と称されるイーサリアムのシステム移行は、米国で仮想通貨のマイニング(採掘)に伴う電力の大量消費が議論の的になり、化石燃料を使うマイニングが温室効果ガス排出量削減を巡る世界的な取り組みを阻害していると環境団体が批判する中で浮上してきたアイデアだ。

英インペリアル・カレッジ・ビジネススクールの気候金融・投資センターで研究員を務めるカーミン・ルッソ氏は「自動車は(環境負荷を減らす取り組みとして)ディーゼル燃料から電気に移行しつつある。それなら仮想通貨もなぜ同じことができないのか」と問いかける。ルッソ氏は最近、仮想通貨と気候変動に関するリポートも執筆した。

イーサリアムは、マイニングに膨大な電力を必要とする「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」からPoSにシステムを切り替える。イーサリアムを運営する非営利団体イーサリアム財団の試算に基づくと、これで消費電力を99%以上カットできるという。

同財団が見積もる現在のイーサリアムの消費電力は6ギガワット近くと、米国の100万世帯余りが使う電力にほぼ匹敵する。PoWの下では、報酬である新たな仮想通貨を得るにはマイニングを通じたデータ証明競争を勝ち抜くために大量の電力を消費する巨大コンピューターが必要になるからだ。一方PoSは、こうした大がかりなハードウエアなしに手持ちの一定量の仮想通貨を掛け金(ステーク)とすることで、報酬を獲得できる仕組みになっている。

ルッソ氏によると、イーサとビットコインを除くほとんどの仮想通貨は現時点でPoW以外のシステムを採用している。

イーサリアムの生みの親であるビタリック・ブテリン氏はツイッターで、2020年から準備され続けてきたマージは今月13─15日に実行されると明かした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中