最新記事

温暖化対策

仮想通貨イーサがマイニング時の電力を99%カットへ ビットコインに重圧

2022年9月16日(金)10時40分

ビットコインは最大の異端者

大半のブロックチェーン取引に膨大なエネルギーが使われることを巡っては、投資家や環境運動家らが批判を強め、政策担当者も無視できなくなりつつある。

実際ニューヨーク州は、化石燃料を集中的に利用する一部の仮想通貨のマイニングについて部分的に禁止した。複数の米上院議員は、仮想通貨関連企業に事業活動が気候変動に及ぼす影響を開示するよう要求している。

自然保護団体シエラクラブの元エグゼクティブディレクター、マイク・ブルーン氏は「過去数年間で、ビットコインとイーサリアムのエネルギー消費問題が気候変動の観点で仮想通貨業界の大部分に暗雲を投げかけてきた」と指摘。その上で「イーサリアムがたった1日でエネルギー消費を最大99%も減らせるなら、それはとても重要な意味があるし、ビットコインを業界の最大の異端者として浮かび上がらせる」と語り、イーサリアムの動きは他の仮想通貨も追随できることを証明していると付け加えた。

ブルーン氏は、グリーンピースなどが結成した、ビットコインに同様の省エネ型システムへの移行を求める環境団体連合に参加している。

ケンブリッジ大学が試算するビットコイン・ネットワークの年間電力使用量は約100テラワット時と、マレーシアないしスウェーデンの国全体の使用量にほぼ等しい。

ただビットコインを擁護する人々は、エネルギー消費という面で仮想通貨業界だけが不当にやり玉に挙げられていると主張する。ホワイトハウスが最近公表した報告書によると、米国全体の電力消費に占める仮想通貨業界の比率は0.09─1.7%だった。

また幾つかの業界団体は、マイニングで使用される電力の半分以上は再生可能エネルギーに由来していることが分かるデータを明らかにするとともに、仮想通貨業界は再生可能エネルギーの電力網拡大や新しいグリーン電力開発計画向けの資金提供に貢献する可能性を秘めていると訴えた。

ビットコイン推進派のシンクタンク、ビットコイン・ポリシー・インスティテュートの研究員マルゴ・パエス氏は、イーサリアムのシステム移行でビットコインにも右にならえと促す声が強まる公算が大きいと認める。

それでもパエス氏は、PoWはシステムを安全かつ民主的に保つ方法だと強調。「システム移行を求める人々はPoWとビットコインが社会にもたらすメリットを理解していない」と述べ、今の仕組みは1人の金持ちが既存の仮想通貨の大部分を買い占めるだけでネットワークを乗っ取るのを難しくしていると説明した。

同氏は「PoWからPoSへの移行を選ぶことは、不当な権力の行使につながらないようなネットワーク環境を確保できるという面ではそれほど重要ではない」と話した。

(Avi Asher -Schapiro記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中韓首脳会合、中国首相「新たな始まり」 貿易など

ビジネス

景気「足踏みも緩やかに回復」で据え置き、生産など上

ビジネス

フランス、EU資本市場の統合推進 新興企業の資金調

ビジネス

3月改定景気動向指数、一致指数は前月比+2.1ポイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中