最新記事

株価

「老後2000万円」騒動から1年──コロナ襲来で「つみたて投資」はやめるべきか、続けるべきか

2020年6月26日(金)11時00分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

つまり、自分の投資判断が結果的に正しかったかどうかは、"自分以外の多数の投資家が決める"ということだ。これが株式投資の難しい点であり「株式投資は人気投票」と言われる理由だが、「皆がどう考えるか」を事前に知ることなどできないので、短期的な値動きで儲けるのは至難の業だ(単なる運ともいえる)。

短期投資よりも確実性が高い方法が長期投資だ。以降でその理由を説明する。

大事なのは「手っ取り早く儲けよう」と思わないこと

筆者は一般の投資家にとって最も大事なことは、株価の短期的な上げ下げを追いかけたりせず、乱高下に振り回されることなく中長期的にじっくりと投資を"続ける"ことだと考えている。言い換えると「手っ取り早く儲けよう」と思わないことだ。

株価は景気や企業業績、投資家の心理状態(強気か弱気か)などで値上がりと値下がりを繰り返すが、日経平均のようにたくさんの企業からなる株価指数は、長期的には緩やかな値上がりが期待できる"仕組み"になっている。

「長期的に値上がりする仕組み」とは、どういうことか。一般に株価の"下値メド"とされるのが、「株価が1株あたり自己資本に相当する水準」で、これは企業の"解散価値"を意味するとされる。株価が解散価値(=下値メド)より低い場合、理論上その株式を全て買い占めて企業を解散すれば"濡れ手に粟"で儲かるので、下値メドを下回る状態は長くは続かないということだ。

専門的な説明はさておき、2000年以降の日経平均について見てみると、1株あたり自己資本相当の水準(図表4のシャドウ部分=日経平均の下値メド)は趨勢的に上昇してきた。

リーマンショック(2008年)やチャイナショック(2015年)のように多くの日本企業が最終赤字に陥ったときは下値メドの水準が少し下がったが、2000年当時6,500円程度だった下値メドは直近で2万円を超えている。約20年間で3倍超に上昇、年率約6%で切り上がったことになる。

実際の株価は景気変動などに応じて大きく値上がりと値下がりを繰り返したが、下落局面では概ね自己資本相当水準で下げ止まった。さすがにコロナ禍ではショックで一時的に株価が下値メドよりだいぶ売り込まれたものの、すぐに反発した様子が確認できる。

図表4からは、仮に20年前にコロナ禍が襲来していたら日経平均は5,000円割れを避けられなかっただろう。しかし、現在は下値メドが20年前よりずっと高いので、3月の最安値は1万6,500円程度にとどまったと考えられる(もちろん政府・日銀の政策効果もあるが)。

Nissei200625_4.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中