最新記事

経営

インドと日本の「非欧米型」イノベーションから学べること

2017年8月8日(火)19時17分
ニヒル・ラバル(デューク・コーポレート・エデュケーション・インド経営幹部) ※編集・企画:情報工場

●ありえない時計

世界最薄の防水腕時計を考案し、開発・生産している国といえばスイスか日本と思うのではないだろうか。実はインドなのだ。しかも設立されて10年と少ししか経っていない会社「タイタン」が、その偉業を成し遂げたのである。

タイタンがその挑戦を始めたとき、彼らはスイスの時計職人たちのところへ赴き、アドバイスを求めた。しかし、職人たちは口を揃えて、そんな時計はありえないと言った。超薄型の時計も、防水時計ももちろん作れるが、その両方を同時に実現するのは無理だという。タイタンは結局、声高にその技術を誇ることもなく、控えめな態度で偉大な技術的ブレークスルーを成し遂げた。4年かかったが、時計製造の常識を覆すエンジニアリングの画期的大勝利だった。

●注目される眼科病院

インドの地方都市マドゥライのある医療機関が、経済的に恵まれない人の眼科治療に関するイノベーティブなビジネスモデルを作り上げた。アラビンド眼科病院が、従来の眼科手術の効率を10段階は引き上げるテクニックを開発したのだ。このビジネスモデルは、何百万人もの貧しい視覚障害者に、無料もしくはほとんど無料で手術を行うことを可能にした。それでいて病院は手術によって収益の40%を生み出している。

アラビンド眼科病院は1年に20万件もの白内障の手術を行っている。これは同病院が世界最大の眼科学の研究施設であることも示している。なにしろ、ハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学の学生が体験医療実習やトレーニングに訪れているのだ。

【参考記事】インドのしたたかさを知らず、印中対決に期待し過ぎる欧米

© 情報工場
johokojologo150.jpg



※当記事は「Dialogue Q2 2017」からの転載記事です

dialoguelogo200.jpg





情報工場
2005年創業。厳選した書籍のハイライトを3000字にまとめて配信する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を提供。国内の書籍だけではなく、エグゼクティブ向け教育機関で世界一と評されるDuke Corporate Educationが発行するビジネス誌『Dialogue Review』や、まだ日本で出版されていない欧米・アジアなどの海外で話題の書籍もいち早く日本語のダイジェストにして配信。上場企業の経営層・管理職を中心に約6万人のビジネスパーソンが利用中。 http://www.joho-kojo.com/top


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米加州の2035年ガソリン車廃止計画、下院が環境当

ワールド

国連、資金難で大規模改革を検討 効率化へ機関統合な

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中