最新記事

経済統計

中国の成長率は本当は何パーセントなのか?

中国の景気先行き不安で神経質になっている世界の投資家が最も知りたい数字を求めて

2015年10月6日(火)17時30分
丸川知雄(東京大学社会科学研究所教授・中国経済)

疑わしきは 工業製品の生産量の伸びと工業全体の成長率が大きく乖離 REUTERS

 中国経済に対する不安感が世界に広がっている理由の一つは中国当局が公表する数字が疑わしいことにあります。中国政府が発表した2015年上半期の国内総生産(GDP)成長率は7.0%。年初に立てた目標値どおりの結果で、決して低い成長率ではありません。ならば中国政府は経済は目標どおり順調に推移しているとして涼しい顔をしていてもよさそうなものですが、実際には2014年11月から15年8月まで5回も金利と預金準備率を引き下げたり、公共事業を積み増すなど景気刺激に躍起になっています。本当は中国政府は経済がもっと悪いと思っているのではないかという疑念が広がっても当然です。

 私も2015年1-3月のGDP成長率(7.0%)が発表された時にきわめて疑わしいと思い、1-6月の成長率やその他の統計を見てますます疑念が深まりました。私は中国の統計などデタラメだ、という立場に立つものではありませんが、今年のGDP成長率に限って言えば粉飾があるとにらんでいます。

 では2015年上半期の本当の成長率が7%より低かったのだとしていったいどれぐらいなのでしょうか。私の推計結果はズバリ5.3%です。どうしてこのような結果になったかを説明する前に中国の統計の特徴について説明しましょう。

農業生産と工業生産の統計や正確

 中国の経済統計の特徴は農業生産と工業生産に強いことです。ちなみに中国における工業とは鉱業、製造業、電力・ガス・水道業を含みます。計画経済を遂行するためには農業と工業の生産を正確に把握する必要があったため、1950年代からこれらの生産量については統計をとってきました。そうした流れから、市場経済体制に移行した今でも農業と工業に関しては非常に詳しく統計がとられています。私は自動車産業統計の生データを分析したことがありますが、120社以上もあるメーカーのすべてについて、経営不振で年8台しか車を生産していないみじめなメーカーに至るまで1台単位で生産量が把握されています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO

ビジネス

米総合PMI、4月は50.9に低下=S&Pグローバ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中