最新記事

リーダーシップ

HBS教授が教える、「使える部下」の育て方(後編)

2015年8月11日(火)16時30分

 私は彼女に、まずは落ち着いて、部内のスター候補をリストアップするよう勧めました。それから彼女は時間を作って彼らと個別に面談するようになりました。面談の前には、彼らの人事ファイルを出して、彼らのこれまでの査定結果、業務履歴、背景などに目を通しました。個別面談では、質問をして、彼らの今の状況を確認しつつ、どんな仕事をしたいか、目標は何かなどを訊ねました。

 こうした努力の末、彼女は各社員のためにキャリアプランや業務プランを立てました。そしてこのプランを使って、部内の管理職の後継者育成計画の草案を練りました。このプロセスに熱心に取り組む一方で、もっと早くに計画を練らなかったことを後悔しました。しかし明るい話題もあります。後に、彼女が後継者育成計画をCEOに見せたところ、CEOは感銘を受けて、この方法を全社に導入しようと提案してくれたのです。

後継者育成計画を練る

 大抵の場合、組織のなかには金の卵がいます。なかには、まだ能力が開花していない人もいるでしょう。金の卵を見つけ、能力を評価し、彼らの能力に合った仕事を見つけるには、緻密な後継者育成計画があると便利でしょう。まずは、たくさんの問いに答えて、解決策を絞り込みます。最初の質問です。「私の後を継げる社員はいるか?」答えがノーであれば、次はこの問いです。「将来私の後を継いでくれる優秀な人材を採用するには、ヘッドハンターに社外の人を紹介してもらうべきだろうか?」

 一番目の質問の答えがイエスのとき、すなわち後継者候補がいるときは、この質問です。「彼らの夢や彼らの性格や特徴を理解していると言えるほど、彼らと話しているだろうか?」「能力のある社員になるべく権限を委譲するようにし、彼らにもっと期待をかけ、もっと厳しく指導するべきだろうか? そうすれば、彼らの成長を促しつつ、彼らの能力を試すことができるのではないか?」「候補者を主要な業務のうちの第一段階のポストに就かせて、彼らのスキルを伸ばすべきか?」

 これを実践すれば、あなたの部下だけでなく、あなたの仕事も向上するでしょう。業務内容をはっきりとわかりやすく伝えれば、部下たちは最優先タスクを完璧にやってくれるでしょう。こうして部下のレベルを引き上げると、自然に自分のレベルも上がります。というのも、優秀な生徒からは多くのことを学べるからです。

 社内にあなたの後継者になれそうな社員が二、三人見つかったとしましょう。その場合は、本人に後継者だと知らせる必要はありません。計画に従って、彼らに責任ある仕事を与え、コーチングを増やせば、有望な若手社員たちはますます会社に貢献するようになり、モチベーションも上がります。彼らが全力を尽くせば、あなたも格段に仕事がやりやすくなるでしょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豪CBA、1─3月期は減益 住宅ローン延滞の増加見

ワールド

金総書記、露戦勝記念日でプーチン氏に祝意 「確固た

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

4月末の外貨準備高は1兆2789億ドル=財務省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中