最新記事

日本経済

失業率3%でリニアもあるのに
日本が景気後退に陥るのはなぜ

7〜9月期の実質GDP成長率は予想外の低さだったが日本の景気後退は諸外国とは事情が違う

2014年11月18日(火)15時58分
ジョーダン・ワイスマン

世界最速 技術力はあっても景気回復は進まない(4月、ケネディ駐日大使とともにリニアに試乗した安倍首相) Reuters

 ついに、日本が景気後退に入った。巨額の財政赤字削減のために今年4月から実施した軽率な消費税増税が影響したとみられる。

 7〜9月期の実質GDP成長率は年率で1.6%減となり、4〜6月期以上に縮小。今回のマイナス成長は予想外の衝撃を与え、安倍政権は政治的苦境に陥ることになりそうだ。理由は大きく2つある。

景気刺激と財政再建を同時に実施するのは悪い考えだ

 今回の景気後退は日本が自ら招いたものだといえる。2012年の首相就任以来、安倍は「アベノミクス」と称する経済政策を繰り出してきた。財政支出と量的緩和政策をセットで行い、日本経済を長引くデフレと低成長から脱却させようとの試みだ。当初はインフレが進み成長率は上昇して、アベノミクスは効果を上げているように見えた。

 だが、日本は財政赤字にあえぎ続けている。これを削減するため、政府は97年以来となる消費税増税に踏み出した。4月に5%から8%への増税を実施したうえ、来年には10%への増税が予定されていた。今年4月当初でさえ、大規模な消費税増税が中所得者層の消費意欲を減退させ、景気回復を阻害するのではないかと専門家らは懸念していた。

 彼らの懸念は正しかったようだ。消費税増税以降、家計支出は落ち込んだ。アベノミクスがもたらした物価上昇に実質賃金の上昇が追い付かず、家計が以前より冷え込んでいるところに、消費税増税が追い打ちをかけた。現時点では、安倍政権は来年の10%への消費税増税の延期を検討している。

日本の景気後退はアメリカとはタイプが違う

 景気は低迷しているものの、日本の完全失業率は今も3.6%と低く、16年ぶりの低水準となった今年5月の3.5%をわずかに上回る程度だ。金融ブロガーのスコット・サムナーは、日本の低失業率に注目してこんなジョークを飛ばした。「日本が景気後退というのなら、景気後退の定義を見直す時だ」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中