コラム

「新疆綿使っていない」発言と、ユニクロ好きが消えた中国

2024年12月14日(土)21時18分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

そんな中国に見切りをつけた?

今から10年ほど前、経済成長で中産階級が台頭してきた中国では、「高品質・低価格」な中産階級向けブランドであるユニクロや「無印良品」が、その上質で快適、シンプルな都会スタイルで人気を集めた。しかし現在、若者の高失業率や減給、中高年層の破産の増加で、中産階級の財布は枯れ始めている。

一国の中産階級の凋落は、都市生活の衰退、大衆文化の貧困化、極端な格差と不平等の拡大そして社会的連帯の崩壊を招く。最近中国で無差別殺傷事件が多発しているが、車を使った暴走事件が多いのは、枯れ果てた中産階級の絶望ゆえではないか。かつて夢があった中産階級の絶望は、もともと車も何もない貧しい人々の絶望よりもはるかに恐ろしい。

ユニクロの柳井氏もそんな中国に見切りをつけ、あえてこの発言をしたのかもしれない。


ポイント

新疆綿
世界三大綿の1つ。中国政府が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒ら少数民族を弾圧していると報じられたことをきっかけに、2021年から多くのブランドが使用を取りやめた。

淘宝
アリババが運営する中国のECサイト。2003年にサービスを始めた。決済にはアリババの電子マネーであるアリペイ(支付宝)が使われる。チャットで商品の値引き交渉も可能。

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プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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