コラム

「EXCELLENT WET PAPER」日本の商品パッケージで見かける奇妙な英語

2020年10月14日(水)11時25分

AdamRadosavljevic-iStock.

<英語を付けることでカッコよくする狙いがあるのかもしれないが、「日本の消費者のためだから」ではもう通用しない時代。どう変更すればいいのか、参考にしてもらいたい>

最近は日本の食料品、化粧品、家庭用品などのパッケージの多くに、英語の表記も載っています。外国人のためというよりは、日本人が対象であるようです。

英訳を付けることでカッコよくすることが狙いかもしれません。しかし、その英訳は日本の感覚から付けられた場合があるため、結果として奇妙な英語になってしまっているケースがあります。

「日本の消費者のためだから、いいんじゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、本当にそれでいいのか私は疑問を持っています。

時には非常におかしな英語になり、ネイティブが見ると笑いたくなる場合もあります。また、とても下品な表現になっていることもあります。

日本に住んでいる外国人は増加しており、現在のコロナ禍期間を除けば、この国を訪問している外国人も多い。「日本で売られている物を日本人だけが消費する」という時代はもう終わりました。

さらに、間違った英語が日常的に周りの物に表記されていることは、一生懸命に英語の勉強をしている日本人の学生に対してあまり親切ではないと思います。

今回の記事では私が最近見かけたり、SNSで報告されたりした商品パッケージの奇妙な英語を紹介します。

皆様にとって参考になれば嬉しく思います。

英語を使うことで高級感の演出を狙ったが、逆効果になった例

●HIGH QUALITY
MILD
EXCELLENT WET PAPER

このツイートの写真は、紙おしぼりです。包装には英語だけが書かれているようですが、対象者は外国人ではなく日本人でしょう。

しかし、外国人、特におしぼりの習慣を知らない外国人がこれを見たら、とても当惑するでしょう。もしくは、かなり変な感じなので、笑ってしまうかもしれません。

なぜ変なのかを分析してみましょう。まず、wet paperは普通使われない表現であるため、「これは何?」と思うはずです。英語で紙おしぼりは通常、moist toweletteと呼ばれています。

そして、それにexcellent という形容詞をつけるのはさらに奇妙に聞こえます。どうしてwet paperがexcellentなのだろうと思うはずです。商品に関しての質の良さに言及したいのであれば、superior qualityやhigh qualityのほうが適切ではないかと思います。

その前にも形容詞mildがあるため、さらに分かりにくくなり不自然です。また、日本人にとってmildは印象が良いかもしれませんが、英語では「弱い」という意味もあるので、全ての場面で最良の選択だとは言いがたい。商品のことを形容するならgentleのほうが良い選択だと思います。

商品パッケージに英語を付ける場合は、英語でどのような言葉が使われているかを調べることで、不自然な表記を避けられます。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退

ビジネス

米下院、貧困や気候問題の支出削減法案 民主党反対 

ワールド

米FRB議長がコロナ感染、自宅から仕事継続

ビジネス

グローバル株ファンドに資金流入、米利下げ期待受け=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story