コラム

「HELLO, OUR STADIUM」新国立競技場の妙な英語──これで東京五輪を迎えるの?

2019年12月26日(木)11時15分

日本語をローマ字にしても何も分からない

●"Joho no Niwa"

次に目にしたツイートは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の日本担当編集委員のものでした。「情報の庭」という日本語の下に「"Joho no Niwa"」と書かれています。

まず、日本語が分からない人にとって、Joho no Niwaは何の意味も持たない音だけのローマ字です。もし日本語が分かっても、「情報の庭」とは何なのか、この表示からは具体的に読み取れません。情報を入手できる場所だと分かったとしても、それが果たしてどんな情報なのか、そして「庭」というのは植物が植えられている所なのか、それとも単なる広場のような所なのか、と疑問に感じてしまいます。

ネットでスタジアムの計画資料を参照すると、イベントスペースだそうです。まるで詩のようなネーミング自体は問題ないと思いますが、せめて日本語を「イベントスペース 情報の庭」、英語では「Event space "Joho no Niwa"」と表示すれば、見る人にもっと親切になると思います。

水飲み場にくどい説明は必要ない

●PLEASE PUSH THE UNDER BUTTON

次に、@TochigiREDSさんが知らせてくれた、夕刊フジ運動部のツイートを紹介したいと思います。ペットボトル専用の給水ポイントを見せるのがツイートの目的でしたが、水飲み場の写真もあり、そこに貼られたシールの文章が私は気になりました。

日本語の「下のボタンを押して下さい」はそのままでいいと思いますが、その英訳が笑ってしまうほどおかしいのです。言うまでもないですが、英語ではunder buttonとは言いません。グーグル翻訳に入れても、もっとましな翻訳(Press the button below)が出てきます。

そもそも、Please push the button belowは正しい英訳ですが、そこまで書く必要があるのか疑問です。@akemikdさんが指摘してくれたように、ボタンにPUSHと書かれたシールを貼るだけで十分なはずです。インターネットで海外の水飲み場の写真をチェックすると、何も書かれていないか、もしくはPUSHだけが書かれています。

長い説明を付けることが丁寧だという感覚が日本にはありますが、長い説明は翻訳しにくいですし、見る人の混乱を招く可能性があります。そのため、短くて分かりやすい説明のほうがいいかもしれません。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HD、2030年度の税前利益5000億円超目標

ワールド

原油先物続伸、カナダ山火事や自主減産で需給逼迫観測

ワールド

政策に摩擦生じないよう「密に意思疎通」=政府・日銀

ワールド

米主要シェール産地、6月原油生産量が半年ぶり高水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story