コラム

シリア情勢、北朝鮮情勢に対して米世論が冷静な理由

2017年04月11日(火)15時00分

シリア空爆は衝撃だったが、これ以上の行動はできないという見方も(写真は、ニューヨークでシリア空爆に抗議する人たち) Stephanie Keith-REUTERS

<シリアと北朝鮮をめぐる情勢は緊迫しているがアメリカ世論は至って冷静。シリア空爆以降、トランプ政権がこれ以上の軍事行動に出ることはない、という見方が広がっているため>

トランプ政権は、先週6日にシリアのアサド政権の空軍基地を突如空爆した一方、同時に行われていた米中首脳会談を終えると、北朝鮮危機に対処すべく、空母USSカールビンソンを母艦とする空母打撃群を朝鮮半島に向けて派遣しています。

シリア情勢も、北朝鮮情勢も、「風雲急を告げている」ようなのですが、週明けのアメリカでは、実はどちらのニュースも関心が薄れつつあります。例えば、今週10日月曜の夕方のニュースのヘッドラインは、

(1)カリフォルニア州の小学校へ担任の夫が乱入して銃で無理心中を図り、生徒が巻き添えで負傷
(2)アラバマ州のベントレー知事が公金を使った不倫隠しが露見して辞任
(3)ユナイテッド航空が、オーバーブックしたフライトから降機指名した乗客を強制的に引きずり出して、ネットで大炎上

というニュースが上位に来ています。この中で(1)は、起きた場所がサンベルナルディーノ市という、2015年末に14人が犠牲になったテロ事件の舞台だったこともあり、また惨事の起きた教室が特別支援学級だったこともあって衝撃が走っていますので、トップ扱いになるのは分かります。

ですが、(2)や(3)というのは、それぞれに「ひどい」事件ではあるものの、緊迫した国際情勢に比べて、「今、どうしてこの事件が?」という疑問を感じるのは事実です。とにかくシリアについても、北朝鮮についても、週末を挟んだことで関心が薄れているのです。

【参考記事】「軍事政権化」したトランプ政権

まずシリア情勢ですが、空爆の直後は衝撃が走ったものの、その後の動向を見てアメリカの世論には「これは深刻な事態にはならない」という、安堵感のようなものが出てきています。

一つには、ロシアの反応に一種の「抑制」が見られることです。ロシアは、攻撃を受けたアサド政権と密接な関係がありますから、アメリカの空爆を強い口調で非難しています。ですが、その非難は「少し遅れて」発信されていますし、そもそも空爆の直前にトランプ政権はロシアに対して「事前通告」を行っており、結果としてロシア兵に被害は出ていないことも報じられています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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