- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- トヨタと日本は「トランプ砲」に振り回されるな
トヨタと日本は「トランプ砲」に振り回されるな
アメリカでは、景気回復の継続により若者の雇用が回復しています。アメリカ社会では、NYやシカゴなどの大都市圏を別にすれば、就職と同時に自動車が必要になります。ですが、必ずしも「雇用の質」が確保できない状況では、若者が中型車を買うのは難しいわけです。ですから、思いきって新車をローンまたはリースで手に入れるにしても「コンパクト」になります。
そこで台数の需要はあるわけですが、問題は価格です。若者市場の場合は、アメリカの場合もデフレ要因はあるわけで、価格は非常に重要になります。ですから、少しでもコストダウンをして同じ値段でも付加価値を高めるとか、あるいは思い切って値下げするということが、ビジネス戦略上重要になります。この点については、妥協は難しいと思います。
これに加えてトヨタの場合、100%トランプ氏の意向に沿うことがマーケティング上で得策であるかは分かりません。例えばドル箱の「プリウス」はハイブリッドですし、水素自動車やEVの推進ということで言えば、温暖化否定論のトランプ陣営との相性は悪いわけです。
もっと言えば、北米のトヨタファンの中には、環境問題に熱心な層が多いわけですし、その多くはトランプ氏を支持しないどころか、敵視しているとも言えます。そんな中で、特に北米の本社、そして販社にとっての最善手は「トランプ氏への屈服」とは限らないとも言えます。
【参考記事】トランプ政権誕生で2017年は貿易摩擦再来の年になる?
そのような複雑な事情の中で、北米のトヨタはビジネスをしているわけです。ですから、「トランプ砲」に驚いて、日本の首相官邸が反応したり、あるいは、愛知県の大村知事が現地20日の「トランプ大統領就任式」に出席しがてら「共和党関係者らに関係改善を促したい考え」で会談を調整したりしているそうですが、こうした「日本側の援護射撃」というのは、余り効果的ではないと思います。
この問題でトヨタは、あくまで北米の事業者として、フォード、GMと同列に批判されているだけです。そこへ「外国」の官邸や県知事が動くというのは、かえって「外国企業」ということになって、事態を複雑化させる心配もあるからです。
何しろ、トランプ氏の「私的ツイート」で世界中を右往左往させるのは、19日までです。20日の就任式以降、トランプ氏は合衆国大統領になるのですから、憲法と法律の範囲で行政権を行使する「全く別のゲームのルール」に従ってもらわねばなりません。
例えば、通商問題に関しては、国としての通商政策があり、関連法規があって、具体的なアクションがあるという順番を踏んでもらわなくては、民主国家、法治国家の大統領とは言えないと思います。
党議拘束の緩和こそ政治改革の決め手 2024.04.17
爆発的な観光資源となったアメリカの皆既日食フィーバー 2024.04.10
皆既日食で盛り上がるアメリカ 2024.04.03
大谷翔平の今後の課題は「英語とカネ」 2024.03.27
植田日銀の大規模緩和「出口戦略」は成功しているのか? 2024.03.20
『オッペンハイマー』日本配給を見送った老舗大手の問題 2024.03.13
「日本企業への妨害」と「日本切り捨て」のリスク...トランプ復活で、日本は最大の標的に? 2024.03.07