コラム

ますます高まる共和党大会「トランプ降ろし」の可能性

2016年03月15日(火)15時45分

 この2回目でも「過半数の勝者」が出なかった場合は、第3回へ進みます。ここで州によっては「勝者総取りであっても、また勝った候補が代議員を指名可能であっても」そんなことを言っている訳にはいかない、つまり「全国的な見地から共和党としての大統領候補、統一候補を決定する」という大きな目的のために「拘束が外される」のです。

 ここではカリフォルニアの代議員172人が一気に「自由投票」になるなど、全体の81%が自由投票できるようになります。以降はこの繰り返しとなり、19%は選挙結果からの拘束は続きますが、81%の代議員は、それこそ「個人の自由な投票」を行って、過半数の勝者が出るまで「談合(フロア・ファイト)」を続けることになります。

 ニューヨーク・タイムズなどの説明は以上ですが、これをそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。というのは、アメリカは良い意味での訴訟社会だからです。万が一真剣な戦いとなった場合には、州ごとに州憲法の判断をめぐって「代議員の地位」や「自由投票の可否」に関する規定の合憲性が問われることとなり、訴訟と仮処分など司法の介入が行わる可能性があるからです。

【参考記事】「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい

 いずれにしても、現時点では「共和党が正常化する」見通しとしては、このようにトランプを「1位だが過半数には達しない」という状況に持っていくことが、共和党の本流にとっては最優先課題になっています。

 よく言われるのは、そんな「党大会での談合」で候補を決める、まして支持率1位の候補を「引きずり下ろして」他の候補にスイッチするというのは、共和党としてはイメージダウンになるのではないかという懸念です。

 ですが、この点に関しては「トランプが共和党の大統領候補として堂々と過半数を取って正式に指名される」ことによる「イメージダウン」にくらべれば天と地ほどの差があるというのが、共和党の本流、いやほとんどの上下両院議員の本音だと思います。共和党の支持者の過半数も同じ思いではないでしょうか。

 ということは、この「例外的な」事態、つまり党大会の現場で、代議員の自由な投票によって統一候補が決定するという事態が現実のものとなる可能性がかなり高くなってきているのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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