コラム

中絶禁止を他人事だと思っているあなたへ(パックン)

2022年05月25日(水)17時00分

社会生活における影響も平等に受けよう。

 ・妊娠したことで、学校や教会、会社で噂が広がり、妊婦が友達を失ったりしたら、男も孤立しよう

 ・妊婦が(妊娠させた男性以外とも)セックスや恋愛できなくなったら、男もセックスや恋愛してはならない

 ・逆に、妊婦が電車の中で席を譲ってもらえるなら、男性も座っていいよ。あと、議員さんの公用車もいつでも使っていいし。

身体的な変化は一番再現しづらいけど、ここでも努力しよう。

・妊娠中は腰痛、吐き気などがよくみられるが、アメリカでは「妊娠糖尿病」、急な高血圧などの症状が出る「子癇前症」など、健康問題を抱える妊婦も2割近くいる。悪いが、妊婦が入院したら男も入院しよう。針を刺されたり、点滴を打ったり、病院食を食べたりするぐらいはできるだろう。議員さんとの相部屋で。

・出産時に起き得る問題もとても重大だ。米大手医療保険連合によると妊婦は1000人に2人近くの確率で急性のけいれんや意識喪失、視野障害などをともなう「子癇」が起きる。「心筋症」になる人も1000人に2人以上。「血栓」になる確率は1000人に2.7人。臓器障害をきたす「敗血症」は2.5人。こういった重い健康問題が起きる確率は1%以上に上る。

もちろん、妊婦は突然血管が詰まっても、視野障害や臓器障害になっても、それは男に真似できないだろう。でも、世界中で5~15%とされる、帝王切開が必要なケースはどうだろう。ちょっとお腹を切るぐらいだったら......んん、難しいね。これはまだ検討中。

最後の点もどう再現したものか、やり方に困る。

・大変残念なことに、妊娠中や出産時に起きた問題で亡くなる女性はアメリカでは年間700人以上いる。 そこで男も死ぬことにする?  いや、それはさすがにきつ過ぎる。でも議員さんなら......。

もちろん、ブラックジョーク、冗談です!  真に受けないでください!

でも、中絶禁止法の影響を直に受ける女性にとっては、これらのことは全く冗談じゃないってことは分かるよね。男性も議員も自分に置き換えて考えてほしい。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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