コラム

【論点整理】英国EU離脱決定後の世界

2016年06月26日(日)21時33分

「で、これから何が起こるんだ?」(英ミラー紙) Neil Hall-REUTERS

 論点を整理してみよう。


1)離脱は最終決定なのか。撤回はありうるか

 理論的にはありうる。

 署名も200万人以上集まっている。

 ただし、国民投票で決まった以上、過半数であり3分の2でないという理屈は成り立たない。

 実際には、撤回よりも、脱退プロセスを現時点よりも加速化する動きがある。

→キャメロンは10月に交代してから新首相の下で と言っているが、EUが許さない

→なぜなら、プロセスが厳しいものになるとはっきりさせないと、今後、英国に追随したがる各国の離脱勢力の勢いが増す。それはEU崩壊につながる。

→即座に交渉を開始したいという圧力。

→キャメロンは前倒しで後任を決定することになることもありうる。

 現実的には撤回はないと思われるが、可能性がゼロではない。

2)明日から金融市場はどうなるのか

 混乱は続くが、一方的に世界の株式が下落するとは限らない。反転もありうるだろう。ただし、乱高下は続く。

 市場関係者の期待は、先週の動きはパニックであり、実質的にはそこまで悲観的になる必要はなく、ポンドはともかく、英国や欧州以外の株式の下げは限定的で、反発するというもの。

 個人的には、それは願望シナリオであり、もう少し下落すると思う。

【参考記事】英国EU離脱は、英国の終わり、欧州の衰退、世界の停滞をもたらす

 ただし、リーマンショック級ということはあり得ない。1日での値下がりはリーマンショック時よりも大きかったが、それはリーマンショックのときの下げ方が小さすぎただけのこと。売り場を作るために下げを限定したが、中期にはさらに大きく下げた。トータルでのインパクトは長期にわたり、世界的であり、今回はリーマンに比べればはるかに小さい。英国にとっては別だが。

 為替は、乱高下が続くだろう。

 個人的にはポンドは中期的にもまだまだ下がると思う。ユーロも下がる。ドル円は動く理由がなく、100円程度と思われる。

3)では、なぜ株があんなに下がったのか

 これまでの株価がやや高すぎたということ。これまでの上澄み分を吐き出した。そして、世界は悲観ムードになるので、悲観ムードの中では、株価はダウンサイドのファンダメンタルズに近づく可能性がある。

【参考記事】英国のEU離脱は、日本の誰が考えているよりも重い

 ただし、世界経済全体にもマイナスであるから、下がるのは当然。ただ、これ以上下がるかどうかは、単なる市場のムード、センチメントに過ぎない。実体的には、さらなる暴落は説明できないし、あまり可能性はないのではないか。センチメントの悪化に対する仕掛けによる乱高下での暴落に過ぎないだろう。

 個人的には下値目処は日経平均なら13,000前後。一時的にさらに大きく割れることはありうる。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story