最新記事
シリーズ日本再発見

日本にかつてあった「専売」、その歴史を辿る知的空間へ

2016年09月09日(金)16時30分
高野智宏

 なお、塩作りを科学する「塩のサイエンス」コーナーでは、結晶化の過程をはじめ、大きさや形状が異なる理由などがわかりやすく解説されており、子供も楽しみながら塩の世界を学ぶことができる。

実は豊富な1800点の浮世絵コレクション

 たばこと塩エリア双方に共通する展示品がある。浮世絵だ。これは同館におけるメインの収蔵品であり、肉筆と版画を合わせ約1800点もの浮世絵をはじめとする絵画資料を収蔵する。

japan160909-6.jpg

たばこエリアに展示されていた浮世絵(一部)。浮世絵や版本には江戸時代の人々が一服する様子が多く描かれた

 たばこ常設展示室には浮世絵を紹介するエリアがあり、キセルによる喫煙風景やたばこ盆、懐中たばこ入れなどが描かれた作品が。塩浜の様子が描かれた作品が展示されることもある(展示は随時入れ替え)。また、収蔵品のなかには喜多川歌麿が人気の花魁を描いた「花扇」や、東洲斎写楽が四代目松本幸四郎演じる肴屋五郎兵衛を描いた「敵討乗合噺」など、いずれも常設展示ができないが、文化的にも非常に価値のある作品も収蔵されている。

 たばこ、塩の両エリアともに充実かつユニークな展示品で楽しませる「たばこと塩の博物館」。"専売"という政策が存在したからこそ実現した組み合わせであり、また、それゆえにここまで充実した展示品を収蔵できたということは間違いない。この秋、専売制度がもたらした歴史の歩みと文化の発展を辿ってみてはいかがだろう。


japan160909-data.jpgたばこと塩の博物館
住所:東京都墨田区横川1-16-3
開館時間:10~18時
休館日:月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
入館料:大人・大学生100円 ※展覧会によって特別料金の場合あり
TEL:03-3622-8801
https://www.jti.co.jp/Culture/museum


japan_banner500-3.jpg

japan_banner500-2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米株から日欧株にシフト、米国債からも資金流出=Bo

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、4月改定49.0 32カ月ぶ

ビジネス

仏製造業PMI、4月改定値は48.7 23年1月以

ビジネス

発送停止や値上げ、中国小口輸入免税撤廃で対応に追わ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中