最新記事
シリーズ日本再発見

Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない

“Asura” Is Already the Best New Show of 2025

2025年02月07日(金)13時56分
ジェフリー・バンティング
ドラマ『阿修羅のごとく』宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが演じる4姉妹

(写真左から)綱子、咲子、巻子、滝子の4人は父の浮気や、自らの恋人や夫との関係に悩みもがく NETFLIXーSLATE

<70歳を超えた父の不倫を前にした四姉妹の淡々としたリアクションは、日本社会が強いる「波風を立てないこと」への反乱だ──(レビュー)>

2025年はまだ始まったばかりだが、もしかするとネットフリックスで配信中の是枝裕和の監督作品『阿修羅のごとく』は今年一番の名作ドラマかもしれない。足りないのは、この作品を世に知らしめるネットフリックスの努力だけだ。

ネットフリックス『阿修羅のごとく』 予告編


『阿修羅のごとく』は、竹沢家の4姉妹の苦悩を通し、家族や裏切り、そして1970年代の日本を温かく、かつ鋭い視線で描いた作品だ。是枝の視線は穏やかで冷静で、話を性急に進めることなく彼一流のやり方でストーリーが語られていく。

どの場面も昔のポラロイド写真を思わせる光に包まれ、古いアルバムの家族写真に写った家の中にいるようだ。是枝のこれまでの作品や、家族を描くことへのこだわりを知っている人であれば、なるほどと思える映像だ。

物語は、70歳を超えた父親の恒太郎(國村隼)が何十歳も年の離れた女と関係を持っていると、三女の滝子(蒼井優)が姉妹たちに伝えるところから始まる。恒太郎は妻のふじ(松坂慶子)と2人暮らしだが、週2回、仕事に行くと言って外出し、女と幼い息子の元に通っていたのだ。

滝子は母に伝えるべきだと主張するが、長女の綱子(宮沢りえ)と次女の巻子(尾野真千子)は、事を荒立てるべきではないと考える。ちなみに綱子は夫を亡くしており、彼女自身、仕事先の店の主人との不倫関係が発覚するのを恐れている。

巻子は、夫の鷹男(本木雅弘)と若い秘書との関係を疑っている。末っ子の咲子(広瀬すず)は、滝子に反発するばかりだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中