コラム

生物の行動を決定づける「自由エネルギー」とは?「量子科学」と「脳科学」の融合が解き明かすこと

2026年01月14日(水)17時52分

山田氏は、量子ゼノン効果の解釈の前提として、「ゼノンのパラドックス」を紹介。「飛んでいる矢を全ての瞬間でスナップショットのように観測すると、どの瞬間でも矢はその場所に静止しているように見える。どの瞬間も止まっているのだとしたら、一体動きはどこで起きているのか」といったパラドックスだ。

まるで、観測という行為が、時間の流れを止めてしまうかのような、不思議なこの量子ゼノン効果を、山田氏は人間の心に応用し、観測しすぎると信念が凍り付いて、固まりすぎてしまうという心のモデルを考えた。

すなわち、私たちが持つ「信念」(自分はこうだ、世界はこうだという思い込み)は、本来は不安定でゆらぎのある状態だ。しかし、その信念を繰り返し、短い間隔で自分自身で確認し続ける、「自分はダメだ」という思いを繰り返し頭の中で反芻すると、その信念は崩壊せずに固定化されてしまうのではないか、と問う。

先行研究では、有罪・無罪の判断実験で、途中で何度も判断を求められると最初の判断から変わりにくくなることが示されている。この現象は古典的なベイズモデルでは説明できないが、量子モデルではうまく説明できた。

二人の心は「絡み合って」いる

講演の最後、山田氏は1人の心から2人の関係へと視点を移した。「メンタル・エンタングルメント(心の絡み合い)」という概念だ。スクリーンに、母親が歌を歌うと赤ちゃんの表情や体の動きがだんだん引き込まれていく動画が映し出された。「母子の引き込み」と呼ばれる現象で、「これは単に2人が同時に動いているのではなく、2人で一つのリズム的な場が立ち上がっていると感じられる瞬間です」と山田氏は語る。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

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