コラム

学校の統廃合が地域の移動課題解決のカギとなる理由

2022年09月28日(水)16時40分
通学風景

四季を感じられ、友人や住民と交流する機会となる通学時間が地域への愛着を育む(写真はイメージです) :urbancow-iStock

<通学が子供の成長に及ぼす影響は決して小さくない。統廃合に伴って新たな通学路や通学手段を検討することは、まちづくりや地域の移動課題を考え直す機会となる>

学校の統廃合が進んでいる。それは地域の移動が変わる転換期でもある。免許返納問題が注目される中、クルマを運転できなくても一生涯にわたって移動に困らない地域をどう作るか──視野を広げて考えたい。

静岡県伊豆市では、3つの中学校を統合し、これまで学校のなかった場所に新校舎が建てられる。文部科学省によると、全国で統合して開校した学校は2019年度に111件、20年度に168件、21年度にも152件にのぼった。そのうち、小学校同士の統合が273件、中学校同士が94件、小学校と中学校の統合が51件だった。

統合によって学校区が広がり、通学時間が延びている子供も多い。そのため、統合後にスクールバスを導入した学校も多く、スクールバスの導入・運行・維持は平均で2915万円の負担になっており、校舎の新増築に次いで多いと報告されている。

子供たちは先輩たちとは違う学校に通うことになる。そのため地域では、開校までに、生徒たちの通学ルート・通学手段を考える必要に迫られる。

この問題について取り上げられるとき、通学手段のことにばかり焦点が当たりがちだ。通学時間が子供の成長にどう関係するのか。まちづくりや地域の移動を確保する観点から考えたとき、通学ルートや通学手段の変更が地域にどのような影響を与えるのか。そういった広い視野が欠けているように感じる。

徒歩や自転車で通学するメリット

子供の成長や地域愛を育むことに通学が果たす役割は大きい。

デンマークのコペンハーゲン大学とオーフス大学の合同研究チームは12年、徒歩や自転車で通学すると授業で集中力が高まるという内容の論文を発表し、話題となった。小学3年生の場合、徒歩や自転車で通学すると、教育を受けた期間が6カ月長い児童に匹敵するほど集中力が増すという。朝食や昼食の有無以上に通学方法の影響が大きいのだ。

スクールバスや家族の送迎よりも、歩いたり自転車に乗ったりして、毎日カラダを動かして通学した方が体力がつくのは自明の理。通学は生きる力を育む時間でもある。地域の四季を感じ、農業・歴史・文化を知る。友人や住民と交流することで地域愛が芽生え、その記憶は生涯にわたって残る。通学は豊かな時間なのだ。

徒歩、自転車での通学はできるかぎり残したい。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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