コラム

「国会議員の特権」旧文通費問題を根本解決したくない既得権益層は誰か

2022年05月31日(火)18時36分

国会議員の「特権」に対する国民の目は厳しくなっている Issei Kato-REUTERS

<旧・文通費問題が先送りされそうだ。「日割り支給」とする改正法は成立したが、使途公開や未使用額の国庫返納の議論は結論が出ないまま、国会閉幕を迎える。不透明なままの方が都合のいい既得権益層がいるからだが......>

調査研究広報滞在費(旧・文通費)の抜本改革が先送りされそうだ。5月27日の衆議院予算委員会で岸田文雄首相は「いつまでと区切って議論することではないと承知している」と述べ、通常国会閉会後に議論を先送りする姿勢を示した。

旧・文書通信交通滞在費をめぐっては、「日割り支給」を可能とし、名称を「調査研究広報滞在費」と改める国会法・歳費法の改正法が4月15日に成立している。しかし、その後の動きは停滞気味だった。

与野党6党による協議会は、「使途の制限」をめぐって禁止(ネガティブ)リストを検討している。他方で「今国会中の結論を得る」としてきた「使途の公開」および「未使用分の国庫返納」制度は、本格議論には至らなかった。通常国会は6月15日に閉幕予定で、もはや時間切れだ。

付け焼き刃の生煮え改革でお茶を濁すぐらいなら、時間がかかっても、制度を抜本的に改革して「経費の実費精算」制度を導入する方が良いとも思われるかもしれない。

しかし、旧・文通費制度の改革は今に始まった議論ではない。GHQによる「郵便無料特権の付与」という勧告を受けた昭和22年(1947年)の制度創設以来、幾度となく国会の内外で改革の必要性が叫ばれてきたものだ。昨年11月の日本維新の会による問題提起が今回の改革議論の端緒であるが、そこから数えて「7ヶ月半」なのではなく、昭和22年以来の「75年」という歳月が積り重なった問題として捉えなければならない。

その観点から言うと、「いま区切りを付けないで、いつ付けるのか」と気にもなるが、実際のところ改革にブレーキがかかるメカニズムは少しばかり複雑だ。

まず旧・文通費は「全て」の国会議員にとって既得権益になっている。年額1200万円もの金銭を自由に出来る権利を簡単に手放す議員はいない。既得権益を持つ者が制度改革の抵抗勢力になり、国民の目の届かない所で改革を骨抜きする例が一つまた増えた、と言えるかも知れない。

さらに、「政治とカネ」に関わる問題は通常、政治権力を有する政権与党に付随する腐敗を野党が攻撃するという構図を取ることが多い。しかし、旧・文通費の構図は違う。例えば労働組合等の支援団体から継続的な資金提供がある野党議員は、政治資金確保の安定性がある反面、その使途について出身母体や支援団体からの厳しい視線を浴びることもあるがゆえに、かえって自由に支出できる資金が少ないという事情があったりする。そうした野党議員にとって旧・文通費はある意味で「貴重な財源」となる。「野党」議員は一枚岩ではないし、改革に積極的とは限らないのだ。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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