コラム

日米関税交渉、日本は「取りあえずの勝ち」だが...待ち受ける「今後の交渉」の内容とは?

2025年08月06日(水)17時07分

トランプから譲歩を引き出した意義は大きいものの

皮肉なことだが、石破政権が参院選で大敗したことから、早期に日本と交渉をまとめないと政権が代わってゼロからのスタートになる懸念が生じたことも決断を後押ししたと考えられる。

複数の偶然が重なったとはいえ、強硬なトランプ氏から大きな譲歩を引き出した意義は大きい。最終的にこの水準で落ち着かせることができれば、戦後の日米通商交渉の中で最も成功した部類に入れてよいだろう。


日本側は、自動車の関税を12.5%まで引き下げてもらう代わりに、アメリカに対して総額80兆円の投資を実施しなければならない。具体的な中身は十分に決まっているとはいえず、個別の案件において、本当の意味でどちらの利益となるのかは、今後の実務交渉に委ねられる。

トランプ氏としては、譲歩した分を取り戻すべく、投資案件についていろいろと厳しい注文を付けてくるに違いない。

これまでのやりとりは、今後も継続するシビアな関税交渉の緒戦という位置付けであり、日本は第1ラウンドで勝利したにすぎない。今後は詳細条件をめぐる第2ラウンドが始まると考えたほうが自然だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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