コラム

高市新総裁をいきなり襲う国内外の暴風雨

2025年10月18日(土)14時00分

もう1つは、「日本はアジアの中では大国」という思い込みが、時代遅れになってしまったこと。それは、中国やインドが200年の眠りから覚めたためだけではない。経済力・技術力で日本は韓国、台湾などに肩を並べられ、マレーシア、タイなどの急追を受けている。アジアの市場での販売網は華僑、中国、インドなどに大幅に押さえられている。アベノミクスの置き土産の円安で、日本の企業の株価は超割安。世界でトップシェアを持つ部品・素材の製造企業も、アジアの企業が簡単に買収していく。

今やるべきは実質賃金の上昇

日本は何よりも、経済力を回復しないといけないのだが、そのためには「アベノミクス」への正しい認識が必要である。アベノミクスは「軽いインフレを起こして、企業の投資を刺激。消費と投資の好循環をつくり出す」のがミソだった。確かに金融緩和で円安になり輸出収入が増え、経済は少し良くなった。しかし内需は増えなかった。


それは日本の企業が低金利や円安で利益が増えても、賃金を上げるより、外国株主への配当に回したのが大きな要因だ。けしからんと言っても、日本人が株を買わないから外国人に買ってもらうしかない。その結果、日本人が外国人株主のためにせっせと働く一方、日本は円安でどんどん矮小化(ドルベース)し、今や国ごと買い取られかねない、という構図に相成った。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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