コラム

グリーンランドを地上げするトランプ、その真意は?

2025年04月08日(火)17時20分

アメリカにとって、西欧との中間点にあるグリーンランドは安全保障上の要衝で、第2次大戦でドイツがデンマークを占領すると、グリーンランドに軍を送って、ドイツの進出を妨げた。戦後、アメリカはグリーンランドの購入をデンマークに秘密裏に打診するも拒絶されている。

アメリカにとっての対ロ防衛拠点

そのため1949年にNATOが設立されると、アメリカはデンマークと条約を結んで米軍駐留を合法化。53年には大金と多人数をつぎ込んで北西部のチューレに基地を造った。現在、米宇宙軍に移管されてピツフィク宇宙軍基地と改名されている。ここには、ロシア本土や北極海から米本土に向けて発射された長距離核ミサイルを探知するレーダー、そして人工衛星などの軌道を管理するための機材が設置され、アメリカにとって貴重な施設となっている。


今日、グリーンランドは別の脚光も浴びている。気候温暖化で氷が溶けて、地下や海底に眠る膨大な石油、ガス、ウラン、希土類などを採掘できる見通しが立ったのだ。中国の企業が利権獲得に乗り出しているし、日本の企業も探鉱権を取得している。就任演説で領土拡張の野心を表明したトランプ大統領にとっては、格好の案件に違いない。

グリーンランドの外交権を持つデンマークは、トランプの出方を嫌っている。9.11後、米主導のアフガニスタン紛争で最も危険な地域に軍を送って高い死傷率を出した自分たちに、「同盟国とは思えない口の利き方をする」(ラスムセン外相)からだ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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