コラム

煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている

2025年01月22日(水)18時55分

ところが今や、複雑な法律や大々的なお知らせもなしに、再国有化が進んでいる。現在の営業契約期間が終了すれば、もう入札は行われない予定。その代わり、2027年までに1つ、また1つと政府の管理下に戻っていくことになる。

再国有化のプロセスがどう進められているか、あるいは混乱して複雑な既存の民営システムがどう運営されているのか、僕が正確に理解しているなどと言うつもりはない。

でも、この再国有化プロセスが始まったのは、東海岸のある路線であまりにひどい運行が長年続き、政府が2018年に「最終手段」として国営化した時だった。

それが方程式を変えた。保守党でさえ――民営化を擁護し続けてきた政党だ――民間が失敗したものを政府がうまく運営できる可能性があるという原則を受け入れた。それで、事実上の再国有化をどう進めるかについて、先例と枠組みが設定された。そして労働党政権になった今、それは政策として進められている。

この動きは、20年前だったらもっとうれしく感じただろう。僕の見解では、当時は再国有化は差し迫った課題だったにもかかわらず、政府は全くその意思がなかった。

今となっては、民営化の最悪の側面のいくつかは改善されていると思う。たとえば、現在は「遅延払い戻し」という良いシステムが存在する。電車が遅延すると迅速かつ公平な補償を受けることができるのだ。

信頼性99%の日本の鉄道に慣れてしまったが

僕は数年前、そんなに急いでいないときに乗っている長距離列車が30分遅延してひそかに喜んだことがあった――これで50%の払い戻しを受けられる。

僕がいま鉄道会社に怒りを抱えていないのは、毎日の電車通勤の必要がないからかもしれない。また、99%の信頼性で運行する電車にすっかり慣れた日本を最後に訪れてからもう何年も過ぎたせいかもしれない。

さらに、僕の暮らす地域の鉄道網を運営している会社は、数あるひどい鉄道会社の中でまだましなほうだと見られている会社だ。その「グレーター・アングリア」社がまともな仕事をしているのに再国有化して「罰する」ことが正しいのかどうか、正直分からない。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン、X・メタ・TikTok捜査へ 児童性的虐

ビジネス

チリ産銅大手アントファガスタ、25年は52%増益 

ワールド

イスラエルの西岸における土地登記を非難、トルコなど

ビジネス

アングル:高級ブランド株の急変動、AI懸念とヘッジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story