コラム

散々叩かれた菅政権が「それなり」だったと言えるこれだけの理由

2022年10月22日(土)18時57分

「嗅覚」で浮上できるか

結局のところ菅政権の不幸は、ビジョンなき仕事人タイプの政治家にとって、最も不適当な首相というポジションに就任してしまったことに尽きる。菅首相の続投が世論の支持を得ることはなかったが、彼がいま別のポジションにいたならばどうだっただろう。エネルギー問題では早々と原発再稼働や新規建設を打ち出した岸田現政権は、これまでの政権以上に踏み込んだ政治決定をしている。

だが、国民の関心が異様なほど高まってしまった旧統一教会をめぐる問題では初手からつまずき、次々噴出する政治家と同団体の関係への対応についても後手に回り、支持率低下を招いている。新型コロナでも、オミクロン株に適した医療体制の構築もできていない。「岸田ビジョン」を打ち出したはいいが、社会が求める問題に応えているようには見えないのが現政権の弱点だ。

菅は最近も、選択的夫婦別姓問題を政治の責任で解決していくべき課題と発言したことで話題を集めたが、それも課題解決型の政治家ゆえの嗅覚か。今、どう振る舞うか。注目していきたい。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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