焦点:「米国売り」再燃の観測、グリーンランド巡るトランプ関税で
グリーンランド・ヌークの旧港で犬の散歩をする男性。1月18日撮影。REUTERS/Marko Djurica
Yoruk Bahceli Dhara Ranasinghe
[ロンドン 19日 ロイター] - トランプ米大統領が米国によるデンマーク自治領グリーンランド購入に反対する欧州8カ国に関税を課すと表明したことで、市場では「米国売り」が再び話題になっている。思い出されるのは、トランプ氏が2025年4月に相互関税を発表した後の局面だ。
トランプ氏は17日、欧州8カ国が米国のグリーンランド購入を容認するまで、これらの国からの製品に対する関税を引き上げ、税率は2月1日から10%、6月1日から25%にすると明らかにした。
このため欧米間の貿易戦争が再びエスカレートするのではないかとの不安が広がり、19日は欧州株が軒並み下落したが、祝日だった米国でも株式先物が同じぐらい売りを浴びた。
さらにドル安が進み、逆にユーロはポンドや北欧通貨などとともに上昇。安全通貨とされるスイスフランは対ドルの1日上昇率としては1カ月ぶりの大きさを記録した。
インサイト・インベストメントの通貨ソリューション責任者、フランチェスカ・フォルナサリ氏は「週末に何が起きたのかと、かなりびっくりした人が多いのは間違いない。恐らく彼らは自分たちの資産をどう保有すべきか考えているだろう」と述べた。
フォルナサリ氏の見立てでは、ドルは強い米国経済と米国株が支えになるものの、一段と下落する可能性もある。
もっとも今のところ市場の反応は、特に相互関税発表を受けてドルが1日で2%弱下がった昨年4月と比べれば、大きくはない。複数のアナリストは、これはトランプ氏が以前と同じように結局は事態を落ち着かせると市場がみていることの表れだと指摘した。
相互関税の合法性に関する米連邦最高裁判所の判断が控えている上に、欧州側が今回のトランプ氏の関税措置にどう対応するかはなお不透明なことから、状況が読みにくいという面もある。
欧州連合(EU)は米国に対して報復関税を課すかもしれないが、これまで使用していない「反強制措置」を発動し、米国の公共調達や投資、銀行業務へのアクセスを制限したり、サービス貿易に制約を与えたりすることも否定できない。
T・ロウ・プライスの債券ポートフォリオマネジャー、レオナルド・クワン氏は「現時点では大半が(先行きを知る手掛かりとなる)シグナルというよりも(ただの)ノイズに見える」と述べた。
<欧州投資家がドル資産を売るか>
米国債市場の厚みと流動性を考えると投資家が資産を分散させるのは難しいとはいえ、米国からは資金が流出しやすくなっている、と複数のアナリストは分析する。
ドイツ銀行は、米国にとって欧州諸国は最大の債権者で、保有株式・債券は8兆ドルと、残りの世界のほぼ2倍に上ると説明。FX調査グローバル責任者を務めるジョージ・サラベロス氏は「西側諸国の同盟の地政経済的安定が根本から揺さぶられている環境において、欧州人が喜んでこれまでの役割を果たす理由ははっきりしなくなっている」と記した。
問題は、欧州の投資家がドル資産を本当に売るのか、またその代わりに何を保有するかだ。
INGは、EUが欧州の民間投資家にドル資産売却を強制できる手段は乏しく、せいぜいユーロ圏の資産への投資を促すインセンティブを与えることしかできないとの見方を示した。
アナリストの間では、昨年4月当時とは市場環境が極めて異なるとの声も聞かれる。4月以降にドルは下落し、経済見通しは改善しているだけでなく、ドルから他の場所に資産を分散するのはなお困難だからだ。
25年を通じてドルは他の主要通貨に対して10%弱下落した後、最近は安定している。投資家は25年のドル売り持ちポジションを巻き戻し、足元では買い持ちポジションが2億4000万ドル程度構築された。
ソシエテ・ジェネラルのFX戦略を統括するキット・ジャックス氏は、欧州の公共部門の投資家が政治目的のために運用成績を犠牲にするには、事態が今よりもかなり悪化するという条件が必要になるだろうとみている。
一方バークレイズによると、25年の米国株は堅調だったが、今年に入ってMSCI世界株指数を構成する国の93%の株式市場に対してアンダーパフォームしており、米国関連のリスクを踏まえると顧客の資金分散化意欲は引き続き強いという。
バークレイズは「秩序のないローテーション(乗り換え)を示唆する材料はない。しかしわれわれは、リスクバランスは米国以外の株式にじわじわと資産が動く方向に傾いていると信じている」と述べた。
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