アングル:戦時下でも「物流を止めるな」 ウクライナで成長続ける配送会社ノバポスト
ウクライナのチェルニヒウにある店舗で業務に当たる配送会社ノバポストの従業員。2025年11月撮影。REUTERS/Alina Smutko
Olena Harmash
[チェルニヒウ(ウクライナ) 12月22日 ロイター] - 2005年11月のある日、ウクライナの北部チェルニヒウでは朝の喧騒の中、空襲警報が鳴り響いた。同国最大級の民間企業として物流や宅配サービスを担うノバポストの支店では、支店長のイホル・シュトコウスキー氏が従業員と顧客を誘導し、コンクリート製のシェルターに避難させた。
数分後に安全が確認されると、チームはカウンターに戻り、荷物の仕分け作業を再開した。ノバポストでは日常となっている光景だ。
ロシアの侵攻から4年近くがたち、ノバポストは停電、ミサイル攻撃、輸送網の寸断といった状況下でも事業を継続する方法を編み出した。現在は1日150万個以上の荷物を配送しており、防衛産業以外では珍しい、戦時下でも成長を続ける数少ない企業となっている。
首都キーウの北約125キロメートルに位置するチェルニヒウでは日中のドローン攻撃が常態化する一方、夜間にはエネルギー施設への攻撃で住宅や事業所が暗闇に包まれている。
「私たちは業務プロセスを変え、停電や戦時体制に適応している」。チェルニヒウの地域マネージャーのハンナ・ホンチャール氏は、チョコレートや書籍、発電機、家具などあらゆる荷物が山積みになった事務所でこう語った。
2001年に創業されたノバポストは、1―2日で届く配送サービスでウクライナの郵便市場に革命をもたらし、国営郵便会社ウクルポシュタの独占体制に風穴を開けた。現在は戦時下の混乱を成長へと転化させ、西部国境と東部・南部の前線都市を結び、欧州に逃れた数百万人のウクライナ難民にも荷物を届けている。
ノバポストの関係者はロイターに対し、2026年にさらなる事業拡大を計画していると話す。
共同創業者兼共同経営者であるビャチェスラウ・クリモウ氏は、戦争開始からの数年間について「年率3倍の成長を遂げた2010年代初頭に匹敵する発展を実現している」と述べた。
<旧ソ連崩壊後の郵便事業の混乱>
金属と穀物に依存するウクライナ経済において、ノバポストは瞬く間に技術革新の象徴となった。だがロシアとの戦争で経済は壊滅的な打撃を受けた。数百万人が国外に逃れ、国内でも避難を強いられた。企業は前線から離れた西部へ移転し、国の重点は防衛支出に置かれるようになった。
郵便・配送業界も当初は大きな打撃を受けたが、ほどなく立ち直った。
ノバポストは現在、全国の中小企業支援に基軸を置き、さらなる成長を目指している。
<戦争で従業員と支店を失う>
戦時下で事業を続けることは、人命および財務の両面でコストの増大を伴う。
ノバポストの従業員はこれまでに249人が戦争の犠牲となった。227人は徴兵され戦場で命を落とし、残る22人は前線から遠く離れた都市にある自宅や職場でロシア軍の攻撃により死亡した民間人だ。
財務面では、侵攻開始以来、数百の支店や施設の損壊により約10億フリブニャ(約37億4500万円)の損失が発生した。さらに約13万8000個の荷物が破壊された補償として、約30億フリブニャを負担している。
危険な状況が続き他社が撤退する中で、ノバポストはぎりぎりまで現地での事業を続ける大企業の1つだ。ロシア軍の包囲下にある東部ポクロウシクの10支店も、閉鎖に踏み切ったのは2月になってからで、現在も南部ヘルソンなど最前線への配送を続けている。
<年末年始の需要は過去最高水準に>
ノバポストは2024年に約4億8000万件の荷物を配送し、前年比16%増で過去最高を記録した。クリモウ氏は「ハイシーズンに向けて準備を進めている」と述べ、人員を増強したと説明した。
純利益も増加しており、2025年1―9月は前年同期比約35%増の28億8000万フリブニャ(104億5300万円)となった。
従業員数は約3万人。無人宅配ロッカーは2024年の約2万4000台から25年は約3万3000台に増加し、支店数も24年の1万3208店から25年には約1万5000店に拡大した。こういった詳細はこれまで報じられていなかった。
成長はウクライナ国内だけに留まらない。
「戦争が始まった当初、当社はウクライナとモルドバの2カ国にしか拠点がなかった。今は16カ国に展開している」とクリモウ氏は話した。
停電対策として発電機に投資しており、大規模な仕分け拠点では独自のガス供給も確保している。
「停電やブラックアウトが起きても、発電機と(衛星インターネットサービスの)スターリンクがある。街でインターネットが使えなくても、スターリンクに接続して仕事ができる」。チェルニヒウ支店長のシュトコウスキー氏はそう語った。顧客が携帯電話を充電したり、髪を乾かしたりするために立ち寄ることもあるという。
ノバポストは年末年始に向け、ウクライナの伝統的な切り絵装飾「ビティナンカ」に着想を得たお祝い用パッケージを導入した。
「ホリデーシーズンを前に、開封前のひとときから喜びを感じてもらうことが私たちにとって大切だ」――ノバポストのブランド責任者、オリハ・ポプロツィカ=マトゥシャク氏は述べた。





