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日本の参政党、欧米の右派と連携模索 国際的な認知度向上狙う

2025年10月01日(水)15時46分

 10月1日、「日本人ファースト」を掲げて7月の参議院選挙で躍進した参政党が、トランプ米大統領の元側近スティーブ・バノン氏や、欧州の右派政党などとの関係構築に乗り出している。都内で9月25日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

John Geddie Tim Kelly Nathan Layne Takaya Yamaguchi

[東京 1日 ロイター] - 「日本人ファースト」を掲げて7月の参議院選挙で躍進した参政党が、トランプ米大統領の元側近スティーブ・バノン氏や、欧州の右派政党などとの関係構築に乗り出している。

神谷宗幣代表ら党幹部4人と米国の開示文書によると、参政党は「反グローバリズム」を掲げる海外の保守層らとの連携を深めることで、停滞した日本の政治に変革をもたらすことを目指している。主要選挙で大敗を喫した与党・自民党が党立て直しのために新たな総裁を選ぶ選挙に臨む中、参政党は国内政治での影響力を拡大するため、国際的な知名度を高めようとしている。

神谷氏はロイターとのインタビューで、「日本だけでどうこうという時代ではない。日本にもこういう政党があるということを内外のインフルエンサーや政治家、メディアに取り上げてもらい、認知してもらう」と話した。

こうした取り組みを進めるため、参政党は9月に東京に国際渉外の部署を設置した。米国の大学を卒業し、証券会社勤務を経て7月の参院選で初当選した山中泉氏が部門を率いる。

日本には「出る杭は打たれる」ということわざがある。規範を乱す者は批判されたり、大勢に従うよう圧力をかけられたりすることを意味する。山中氏はロイターの取材に、国際的な認知度の高まりは神谷氏がそうした事態に直面するのを避けるのに役立つと話した。

参政党が9月上旬に東京で開いたイベントに、トランプ大統領の支持者で保守系政治活動家のチャーリー・カーク氏を招いたのはその一環だ。カーク氏はそれから数日後にユタ州の大学で銃撃され死亡した。アリゾナ州で行われたカーク氏の追悼式には参政党を代表して山中氏が出席した

その山中氏によると、カーク氏は参政党のイベントに神谷氏と並んで登壇。西側諸国を破壊している大量移民の受け入れを日本が回避するにはまだ遅くないと話したという。また、参政党は2024年にトランプ氏がメインスピーカーを務めたカーク氏の年末イベントに神谷氏が出演できないか協議していた。ロイターはカーク氏が設立した団体「ターニング・ポイントUSA」にコメントを求めたが、回答を得られなかった。

神谷氏が2024年、トランプ氏の元側近のバノン氏や元FOXニュース司会者のタッカー・カールソン氏が司会を務めるポッドキャスト番組に出演できないか模索したことも、外国代理人登録法に基づいて提出された米国の開示文書で分かった。

開示文書によると、トランプ陣営のスタッフだったマシュー・ブレイナード氏が神谷氏に代わって要請を届け出た。ブレイナード氏はロイターの取材に対し、参政党を自発的に支援しており、報酬は受け取っていないとコメントした。

より最近では、7月の参院選後にバノン氏の番組が神谷氏へのインタビューを依頼した。神谷氏によると、都合が合わず実現しなかったという。

バノン氏はロイターの取材に、「神谷代表を番組に出演させるよう取り組んでいる」とし、「日本の政治における革命的な勢力になり得る」と語った。カールソン氏は、日本文化を守るために移民を制限しようとする参政党の取り組みを支持していると話した。

8月には東京でドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)の共同党首と神谷氏が会談した。神谷氏によると、参政党の政策を応援するメッセージを受け取ったという。ロイターはAfDにコメントを求めたが、回答を得られなかった。

神田外語大学の講師で、日本政治を専門とするジェフリー・ホール氏は参政党の戦略について、日本で孤立しがちな極右政治の大きな変化を示しており、党の持続性を高める可能性があるとみる。「参政党が語ることの多くは、移民が各国をどう破壊したかについてだ。欧米で同じような話をする人物と会い、彼らから認められることで神谷氏が目立つことになる」とホール氏は言う。

日本の在留外国人は2024年末時点で約380万人。過去最高を更新したものの、人口の3%であり、米国や西欧よりもはるかに少ない。それでも参政党が発する「静かな侵略」という警告は、7月の参院選で物価上昇にいら立つ一部の有権者の共感を呼び、同党の議席を1から15へ急増させた。

神谷氏はロイターとのインタビューで「いずれは連立与党の一角を担うことを考えている。その時に国際的な理解がないと、日本の極右政党が勃興してきて危ない政権になったとなりかねない」と語った。「軍国主義にしたいわけではないし、極右の政策を取りたいわけではない。今の段階からしっかり認識してもらうことで、参政党が大きくなったときに海外の政党や政治家とも話ができる状態を作っておきたい」と述べた。

(John Geddie、Tim Kelly、Nathan Layne、山口貴也 編集:久保信博、岡坂健太郎)

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