原子力発電、24年は過去最高も今後減速へ 投資不足や老朽化で

9月22日、世界の原子力発電量は2024年に過去最高を記録したが、投資不足や設備の老朽化などを背景に、発電量の維持は難しいとみられている。写真は6月、英サフォークのサイズウェルB原発で撮影(2025年 ロイター/Chris Radburn)
Forrest Crellin
[パリ 22日 ロイター] - 世界の原子力発電量は2024年に過去最高を記録したが、投資不足や設備の老朽化などを背景に、発電量の維持は難しいとみられている。
さまざまな研究機関が連携してまとめる「世界原子力産業現状報告書」で22日明らかになった。
報告書によると、24年の世界の原子力発電量は2677テラワット時と、3年ぶりに増加。主に中国の発電拡大が寄与した。
ただ、この水準を30年まで維持するには、すでに計画されている原発に加え、新たに44基の稼働が必要となる。
非水力再生可能エネルギーや蓄電池との競争も激化している。23年の再生エネ分野への投資は原子力の21倍。発電容量の増設は原子力の純増分の100倍を超えた。
蓄電池のコストは24年に約40%下落したが、原発のコストは上昇が続いている。
原子力プロジェクトは世界中で遅れが生じている。また、20年から25年半ばまでに着工した世界の原発45基のうち、44基は中国かロシアの国営企業がエジプトやトルコなどで手がけた。
報告書は、世界的に原発の新設が急増している証拠はないと指摘。世界の発電量に占める原子力の比率は24年時点で9%だったが、経済性やプロジェクトの進捗状況が大きく改善しない限り、今後さらに低下するとの見通しを示した。
小型モジュール炉(SMR)は、官民の投資が増加しているが、まだ大部分が構想段階にとどまっているという。