ニュース速報
ワールド

インドITサービス業界、AI普及で50万人雇用喪失も

2025年08月08日(金)18時26分

 インドのITサービス大手タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は先月、1万2000人以上の人員を削減すると発表した。写真は作業するエンジニア。2012年10月、南インドのコチで撮影(2025年 ロイター/Sivaram V)

Sai Ishwarbharath B Haripriya Suresh

[ベンガルール 8日 ロイター] - インドのITサービス大手タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は先月、1万2000人以上の人員を削減すると発表した。専門家はAI(人工知能)の普及による人員削減の幕開けであり、今後2─3年でITサービス業界で約50万人の雇用が失われる可能性があると指摘している。

ITサービス業界はインドの中間層形成に重要な役割を果たしてきた。2025年3月時点で567万人を雇用し、インドのGDP(国内総生産)の7%以上を占めている。

これまでエンジニアの多くを吸収してきたが、AIの活用が進むにつれて効率性が向上し、多くの従業員が新しいスキルを求められるようになるにつれて、状況は変わると業界関係者やアナリストは予想している。

シリコンバレーを拠点とするコンステレーション・リサーチの創業者兼会長レイ・ワン氏は、「われわれは現在ホワイトカラーの仕事を根底から変える大規模な転換期のまっただ中にいる」と述べ、今後さらにリストラが増える可能性が高いとの見方を示した。

専門家によると、最も影響を受けやすいのは技術的な知識がほとんどない純粋に人の管理だけを行うマネジャーや、顧客にソフトウェアを納入する前にテストやバグの検出を行い使い勝手を確認するスタッフ、基本的な技術サポートを提供しネットワークやサーバーの稼働状況を監視・管理するスタッフだという。

テック市場情報会社UnearthInsightの創業者ガウラブ・バス氏は「スキルが顧客の要求に合わない約40万─50万人の人材が2─3年以内にリストラされる危機に直面している」と述べた。このうち経験年数4─12年の従業員が70%程度を占めると予想した。

同氏はTCSのリストラから生じるこうした不安により観光や高級品への支出が低迷し、不動産などの長期投資が鈍化する可能性があるとの見方を示した。

ジェフリーズのアナリスト、アクシャット・アガルワル氏はリポートで、「コスト最適化が新規契約を獲得するための鍵を握っており、顧客は生産性の向上を求めている。この傾向はAI導入の増加によっても強まっている」と分析。「このためIT企業は同じ従業員数でより多くの仕事をこなすか、より少ない従業員で同じ仕事をこなす必要がある」と指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、ドイツ最大貿易相手国に復帰の公算 独対米輸出

ビジネス

中国の花形バンカー、2年半ぶり釈放 華興資本の包凡

ワールド

イスラエルのガザ全域軍事支配、国連「即時中止を」

ワールド

独がイスラエルへの軍用品輸出停止、ガザ方針に反発 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 9
    経済制裁下でもロシア富豪はますます肥え太っていた…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中