インドITサービス業界、AI普及で50万人雇用喪失も

インドのITサービス大手タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は先月、1万2000人以上の人員を削減すると発表した。写真は作業するエンジニア。2012年10月、南インドのコチで撮影(2025年 ロイター/Sivaram V)
Sai Ishwarbharath B Haripriya Suresh
[ベンガルール 8日 ロイター] - インドのITサービス大手タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は先月、1万2000人以上の人員を削減すると発表した。専門家はAI(人工知能)の普及による人員削減の幕開けであり、今後2─3年でITサービス業界で約50万人の雇用が失われる可能性があると指摘している。
ITサービス業界はインドの中間層形成に重要な役割を果たしてきた。2025年3月時点で567万人を雇用し、インドのGDP(国内総生産)の7%以上を占めている。
これまでエンジニアの多くを吸収してきたが、AIの活用が進むにつれて効率性が向上し、多くの従業員が新しいスキルを求められるようになるにつれて、状況は変わると業界関係者やアナリストは予想している。
シリコンバレーを拠点とするコンステレーション・リサーチの創業者兼会長レイ・ワン氏は、「われわれは現在ホワイトカラーの仕事を根底から変える大規模な転換期のまっただ中にいる」と述べ、今後さらにリストラが増える可能性が高いとの見方を示した。
専門家によると、最も影響を受けやすいのは技術的な知識がほとんどない純粋に人の管理だけを行うマネジャーや、顧客にソフトウェアを納入する前にテストやバグの検出を行い使い勝手を確認するスタッフ、基本的な技術サポートを提供しネットワークやサーバーの稼働状況を監視・管理するスタッフだという。
テック市場情報会社UnearthInsightの創業者ガウラブ・バス氏は「スキルが顧客の要求に合わない約40万─50万人の人材が2─3年以内にリストラされる危機に直面している」と述べた。このうち経験年数4─12年の従業員が70%程度を占めると予想した。
同氏はTCSのリストラから生じるこうした不安により観光や高級品への支出が低迷し、不動産などの長期投資が鈍化する可能性があるとの見方を示した。
ジェフリーズのアナリスト、アクシャット・アガルワル氏はリポートで、「コスト最適化が新規契約を獲得するための鍵を握っており、顧客は生産性の向上を求めている。この傾向はAI導入の増加によっても強まっている」と分析。「このためIT企業は同じ従業員数でより多くの仕事をこなすか、より少ない従業員で同じ仕事をこなす必要がある」と指摘した。