アングル:ガザ病棟で急増する乳児の栄養失調、「私の親指ほどの細い腕」嘆く母親も

7月30日、パレスチナ自治区ガザ南部のナセル病院。栄養失調に対応する小児病棟のピンク色の壁には、花や風船を手に笑顔で走り回る子どもたちの姿が描かれている。だが、その絵のすぐ下では何人もの母親たちが、静かに横たわり、泣く気力も残っていない乳児を見守っている。写真は栄養失調を診断された5カ月の娘にミルクを与える母親。同病院で7月撮影(2025年 ロイター/Ramadan Abed)
Dawoud Abu Alkas Hatem Khaled
[ハンユニス(ガザ地区) 30日 ロイター] - パレスチナ自治区ガザ南部のナセル病院。栄養失調に対応する小児病棟のピンク色の壁には、花や風船を手に笑顔で走り回る子どもたちの姿が描かれている。
だが、その絵のすぐ下では何人もの母親たちが、静かに横たわり、泣く気力も残っていない乳児を見守っている。
重度の栄養失調を治療する病棟ではこの静けさが普通だ、この静寂が体が機能停止しつつある兆候だ、と医師はロイターに語った。
10カ月のマリア・スハイブ・ラドワンちゃんの母親、ゼイナ・ラドワンさんは「彼女はいつもこうして、無気力に横たわっている。反応もない」と話す。
ゼイナさんはマリアちゃんに十分なミルクや食事を与えることができていないと嘆く。自身も1日1食しかとれておらず、栄養不足で母乳を与えることもできていないという。
「栄養を取らなければ、子どもも私も生きていけない」
ロイターの記者は先週、ナセル病院の医療複合施設を5日間にわたって取材した。ガザにはこの場所を含め、最も深刻な飢餓に対応する施設はわずか4カ所しか残っていない。病棟長によるとロイターの取材中、53人の子どもが急性栄養失調と診断されて入院したという。
ガザの食料備蓄は枯渇しつつある。2023年10月に開始した戦闘でイスラエルは3月、ガザへの全ての物資供給を遮断した。封鎖は5月に解除されたものの、イスラエルは物資がイスラム組織ハマスに流入することを防ぐためとして制限を課している。
イスラエル軍の占領地政府活動調整官組織(COGAT)はコメントの要請に応じ、イスラエルはガザに支援物資を搬入するトラックを制限していないが、国際組織はガザ地区内で物資の確保に苦しんでいるようだと述べた。
また、イスラエル軍は援助団体や国際社会と連携し、ガザの病院のニーズに対応すべく、医療サービスの提供を定期的に支援していると主張した。
ガザで食料不足が続く中、状況は6-7月にさらに悪化しており、世界保健機関(WHO)は大規模な飢餓を警告した。衰弱した子どもたちの様子は世界に衝撃を与えた。
ガザ保健省は栄養失調により過去数週間で154人が死亡したと発表。うち89人が子どもだったとしている。飢餓の状況を監視する国際組織は29日、飢饉(ききん)の恐れが現実のものになりつつあると訴えた。
イスラエル側はガザを飢餓に陥らせる意図はないと主張しており、一部地域での戦闘を停止するほか、物資の空中投下を再開し、より安全な搬入ルートを確保するといった支援措置を26日に発表した。
国連はガザ地区の飢餓状態を救い、健康危機を回避するためには膨大な援助が必要だと述べた。
「乳児にミルクが必要だ。医療物資が必要だ。食ベ物、特に栄養失調に対応するための食料が必要だ」とナセル医療複合施設の小児・産婦人科長、アフメド・アル・ファラ医師は言う。
「病院はあらゆるものを必要としている」
イスラエル当局は、ガザで栄養失調により死亡した人々が既に疾患を患っていたと主張している。ただ飢餓の専門家らは、初期段階によく見られる典型的な症状だと指摘する。
「基礎疾患を持つ子どもたちは、よりぜい弱な状態で、より早くに影響を受ける」とロンドン大学衛生熱帯医学大学院のマルコ・ケラク准教授は話す。ケラク氏はWHOの重度急性栄養失調に関する治療ガイドラインの策定に携わった。
ナセル病院では現在、他に健康上の問題はなくても栄養失調に苦しむ子どもたちを治療しているとファラ医師は言う。生後約3カ月のワティーン・アブ・アムーナちゃんの体重は出生時から100グラム減っている。
「過去3カ月、ワティーンちゃんの体重は1グラムも増えることがなかった。むしろ減る一方だった」とファラ医師は言う。
「筋肉は完全に失われている。骨を皮膚が覆っているのみだ。ワティーンちゃんが栄養失調の重度段階にあることを示している」
「顔さえもそうだ。頬から脂肪組織が失われている」
母親ヤスミン・アブ・スルタンさんはワティーンちゃんの手足を指差しながら、腕の太さが自分の親指ほどしかないと話す。
「見えるだろうか。これが彼女の脚だ。彼女の腕を見てほしい」
<底をつく物資、足りぬ病床>
ファラ医師とWHOはロイターに対し、特に幼い子どもたちにはきれいな水で作った治療用ミルクが必要だが、物資が不足していると指摘する。
「合併症を含め、重度の急性栄養失調を治療するために必要な物資は全て、本当に底をついている」とWHOのガザ栄養失調担当トップのマリナ・アドリアーノポリ氏は言う。「非常に危機的な状態だ」
また、治療センターは受け入れ可能な規模を超えて稼働しているという。7月最初の2週間で5歳以下の子ども5000人以上が栄養失調で外来治療を受けたとし、うち18%は重度の症状だったと明かした。戦時中最多の6500人という6月全体の数字から急増が見られる一方、WHOはこの人数も過小評価されていることがほぼ確実だと述べた。
ヤスミンさんは6月にも娘のワティーンちゃんを入院させようとしたがセンターは満員だったと語った。10日間ミルクが手に入らず、家族が1日の食事も十分にとれない中、容体が悪化し、7月中旬に再び病院を訪れたという。
入院する多くの乳児と同様、ワティーンちゃんも発熱と下痢を繰り返している。栄養失調の子どもは他の病気にもかかりやすいため、症状がさらに悪化する恐れもある。
「この状態が続けば、娘を失ってしまう」とヤスミンさんは嘆いた。
ワティーンちゃんは今も入院して治療を受けている。ヤスミンさんはそばで、治療用ミルクを哺乳瓶から少しずつ飲ませようとしていた。重度栄養失調の副症状として食欲不振が起きることがある、と複数の医師が指摘する。ヤスミンさんは今、病院が1日1度提供する食事で生活しているという。
ロイターの取材中には、前述のマリアちゃんのように体重が回復し、粉ミルクを与えられて退院した子どももいた。
だが、命を落とす子どももいる。5カ月のザイナブ・アブ・ハリーブちゃんは重度の栄養失調から免疫力が低下して感染症にかかり、26日に敗血症で死亡した。両親はザイナブちゃんの遺体を白い布に包み、埋葬するために病院を離れていった。
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