ニュース速報
ワールド

気候変動の被害、2050年までに年38兆ドルか=独研究所

2024年04月18日(木)10時08分

ドイツ政府の支援を受けているポツダム気候影響研究所(PIK)が17日発表した報告書によると、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額は2050年までに推計で年間38兆ドルに達する。写真は、増水するノルウェーのストアルブ川。2023年8月9日に撮影。(2024年 ロイター/ NTB/Annika Byrde via REUTERS)

Riham Alkousaa

[ベルリン 17日 ロイター] - ドイツ政府の支援を受けているポツダム気候影響研究所(PIK)が17日発表した報告書によると、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額は2050年までに推計で年間38兆ドルに達し、人類が排出する温室効果ガスの量が増えるにつれ、さらに被害額が膨らむことがほぼ確実と分かった。

気候変動の経済的影響は完全には理解されておらず、エコノミストの間では頻繁に見解が分かれる。PIK報告書は深刻さで際立っており、今世紀半ばまでに国内総生産(GDP)が世界規模で17%落ち込むと試算している。

報告書の共著者レオニー・ウェンツ氏は「気候を守ることの方が、気候を守らないよりも格段に安上がりだ」と述べた。

報告書によると、2050年までに産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑える地球温暖化対策には推定6兆ドルの費用がかかるものの、対策を怠って2度超上がった場合の推定損害額の6分の1未満にとどまるという。

従来の研究では、気候変動は一部の国の経済に恩恵をもたらす可能性があると結論づけられていたが、今回のPIK報告書では、ほぼすべての国に被害をもたらし、最も大きな打撃を受けるのは貧しい発展途上国であることが判明した。

ただ、各国政府は排出量を抑制するための歳出が少なすぎるだけでなく、気候変動の影響に適応するための対策費も不足している。

今回の報告書に至る研究過程では、過去40年間の1600以上の地域の気温データと降雨量を調べ、どの事象が被害をもたらしたかを検討した。

さらに、その被害評価と気候モデルの予測を使用し、将来の被害を推計した。それによると、排出量が現在のペースで続き、産業革命前からの気温上昇が平均で4度を超えた場合、経済的損失は2050年から2100年までに推計60%の所得損失に達することがうかがわれる。気温上昇を2度以内にとどめると、所得損失は平均20%に抑え込める可能性がある。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中