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アングル:英EU離脱交渉、待ち受ける波乱や「決裂」リスク

2017年04月04日(火)08時20分

 4月2日、2年間の英EU離脱交渉が予想に反して穏やかに幕を開けたが、今後の成り行き次第では波乱に見舞われたり、場合によっては決裂する可能性をはらんでいる。写真はEUの旗。ロンドンで3月撮影(2017年 ロイター/Stefan Wermuth)

[ブリュッセル 2日 ロイター] - メイ英首相が3月29日、欧州連合(EU)に離脱を正式通告した。2年間の交渉が予想に反して穏やかに幕を開けたが、今後の成り行き次第では波乱に見舞われたり、場合によっては決裂する可能性をはらんでいる。

EU欧州委員会のバルニエ首席交渉官は6月初めの交渉開始を想定している。まず英国を除くEU27カ国が4月29日の首脳会議と5月22日の閣僚理事会でバルニエ氏への交渉委任で合意する必要がある。しかし、具体的に誰と誰が話し合うのか、どの言語で協議するのかといった「交渉を巡る交渉」はその数週間前から始まる可能性があり、こちらも本交渉に劣らず難航するかもしれない。

メイ首相とトゥスクEU大統領は離脱交渉の「建設的な」スタートを褒め称え合った。

大統領は31日、離脱交渉を巡るEUの指針案を提示。あるEU高官は「交渉の前進をこれまでよりも楽観視している」と話した。

大統領は指針案で、(1)英国がEUへの支払い義務を果たす(2)英国在住のEU市民3百万人に居住権を与える(3)英国が自由貿易協定発効までの移行期間、EUの規則を受け入れる──ことを求めた。

EU離脱を支持してきたダンカンスミス元保守党党首はBBCで「(トゥスク大統領の)発言は、私が予想していたよりずっと穏当だ」と述べた。

離脱の詳細が決まる前に自由貿易協定を巡る交渉が約束されたことを、英政府はとりわけ歓迎している。

しかしトゥスク大統領は「対決的な」交渉になると警告しており、リスクは残っている。EUの上席外交官は「良い時もあれば悪い時もあるはずだ。目下のところ、われわれは皆、少なくとも礼節を守っている」と話した。

<虚勢>

EU側は、メイ首相が29日に提出した6ページの書簡について、「いいとこ取り」の態度を改めたと受け止めている。

首相はEU単一市場からの離脱には犠牲が伴うことを認めた。自由貿易交渉に2年以上を要し、超国家的な仲裁者の介入が必要になることも視野に入れている。

別のEUの上席外交官は「書簡は非常に友好的なものだった」と語る。

書簡の中で最も厳しい指摘は交渉決裂の可能性に触れた部分で、決裂すれば犯罪取り締まりや安全保障面での協力が損なわれると示唆している。

英国の閣僚とトゥスク大統領はこの点について、メイ首相が情報提供の停止をちらつかせたと考えるのは誤りだと強調している。とはいえ大統領側も、交渉決裂の場合に備える姿勢を明確にしている。そしてEU高官らは、交渉が決裂の危機に瀕した場合には英国の方がずっと弱い立場に置かれると訴える。

あるEU高官は「われわれがまず英国を崖っぷちに追い詰め、怖い思いをたっぷり味わわせなければならない」と語った。

別のEU高官は、メイ首相が安全保障について脅しを掛けたつもりなら間違いだと指摘。「交渉事において、脅しは決してうまいやり方ではない。それどころか虚勢だ」と話した。

(Alastair Macdonald記者)

ロイター
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