ニュース速報
ビジネス

インタビュー:再保険通じた生保の海外ファンド投資に警戒、リスク管理難しい=金融庁長官

2025年08月08日(金)18時20分

 金融庁の伊藤豊長官(写真)は、ロイターのインタビューで、足元で増加している生命保険会社による再保険を通じた海外ファンドへの投資に警戒感を示した。8月7日、東京で撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)

Takahiko Wada Miho Uranaka

[東京 8日 ロイター] - 金融庁の伊藤豊長官は、ロイターのインタビューで、足元で増加している生命保険会社による再保険を通じた海外ファンドへの投資に警戒感を示した。投資リターンを求める生保に理解を示す一方で、外国籍の海外ファンドなど運用先について、実態把握がきちんとできるのか、各社によるリスク管理は「なかなか難しい」と述べた。

ノンバンク部門は近年、存在感を増し、世界の金融資産の約半分を保有するとされる。伊藤長官はプライベートファンド向けの投融資に注目しており、中でも日本の生命保険会社による再保険への資金の流れを注視していると話した。7月30日には、かんぽ生命が米投資ファンド傘下の保険会社が新たに設ける再保険ファンドに20億ドルを投資すると発表したばかりだ。

伊藤長官は「長期資金を運用する生命保険会社にとって、プライベートアセットは非常に重要な投資分野」と述べ、生保がリターンを求めて海外のファンドを活用する動きには一定の合理性があるとの見方を示した。一方で「運用先の信用リスクが発現してしまった場合は、その資産がなくなってしまう」と指摘。保険会社自身による運用先の実態や信用リスクの把握について「なかなか難しいリスクマネジメントが必要だ」と話した。金融庁として生保各社へのヒアリングを進めているとし、今後の対応を検討している段階だと述べた。

金融庁は海外のノンバンクに投融資する国内の金融機関や、海外のノンバンクからの取引を仲介する証券会社などへの監督を通じてノンバンクの動向を把握している。ただ、外国籍のファンドの実態把握には海外当局との連携が欠かせない。伊藤長官は、特にノンバンク部門のプレゼンスが大きい米国の当局とは「不断にやらないといけない」と述べた。 金融安定理事会(FSB)がノンバンクの規制のあり方を長年議論しているが、ノンバンクの態様がさまざまなこともあり、どのように規制すべきか「必ずしも一義的な解がない状態だ」と対応の難しさをにじませた。

昨年8月には米国の景気後退懸念などから日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録したほか、今年4月にはトランプ米大統領の相互関税発表を受けて株式や債券に強い売り圧力が掛かった。伊藤長官は日本市場の「脆弱性が高まっているとは思っていない」と述べ、「ファンダメンタルズに影響するような出来事があったときに動くのは仕方がない」とした。

株式市場の安定のためには「違う売買動機の投資主体をなるべく増やしておいた方がいい」と述べ、海外の機関投資家や個人も含め、投資家層の多様化を図る必要があると強調した。

国債市場では、規制対応が一巡したことにより、超長期債の主要な買い手だった生保の存在感が大きく後退。需給バランスの崩れが超長期金利上昇の一因になっている。日銀が国債買い入れを減額する中、大手銀行などが国債保有を増やすか注目されているが、伊藤長官は、金融機関は国債の価格や商品性、市場環境を見ながら売買するものだとし、「特定の主体を安定的な買い手にするのは無理ではないか」との認識を示した。 伊藤氏は1989年に東京大学法学部を卒業し、旧大蔵省に入省。金融庁総括審議官、監督局長を経て、今年7月1日に長官に就任した。

*インタビューは7日に実施しました。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、ドイツ最大貿易相手国に復帰の公算 独対米輸出

ビジネス

中国の花形バンカー、2年半ぶり釈放 華興資本の包凡

ワールド

イスラエルのガザ全域軍事支配、国連「即時中止を」

ワールド

独がイスラエルへの軍用品輸出停止、ガザ方針に反発 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 9
    経済制裁下でもロシア富豪はますます肥え太っていた…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中