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ECB、6会合連続利下げ 貿易戦争で「異例の不確実性」

2025年04月18日(金)02時21分

欧州中央銀行(ECB)は17日、主要政策金利の預金金利を予想どおり0.25%引き下げ2.25%とした。フランクフルトの本部で3月撮影(2025年 ロイター/Jana Rodenbusch/File Photo)

[フランクフルト 17日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は17日、主要政策金利の預金金利を予想通り0.25%ポイント引き下げ、2.25%とした。トランプ米大統領が打ち出す関税措置の圧力にさらされ苦闘するユーロ圏経済の下支えを目指す。

利下げは6会合連続で、過去1年間で7回目。決定は全会一致だった。ECBは、米国の関税措置でユーロ圏の経済成長が大きな打撃を受ける可能性があると警告。これを受け、ECBは今後も追加利下げを実施していくとの見方が強まった。

ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「異例の不確実性によって経済見通しは不透明になっている」と指摘。「経済成長に対する下振れリスクが増大している」とし、「世界貿易を巡る緊張が大幅に高まり、これに伴い不確実性も増大していることで、ユーロ圏の輸出が鈍化し経済成長の下押しにつながる可能性が高く、これにより投資と消費も減退する恐れがある」と述べた。

ECBは声明で「不確実性の高まりは家計や企業の信頼感を低下させる可能性が高く、貿易面での緊張に対する市場の否定的でボラタイルな反応は資金調達状況に引き締め効果をもたらす可能性が高い」とし、「これらの要因はユーロ圏の経済見通しをさらに悪化させる可能性がある」と警告した。

同時に、金融政策が「実質的に引き締め的でなくなりつつある」という文言を声明から削除した。

ラガルド総裁は、会合ごとに決定を下す姿勢を強調。直面している問題に対し「機敏となることが重要になってくる」とし、「これまで以上にデータに依存する必要がある」と述べた。

さらに「われわれが不確実性のピークにいるかどうかは断言できない」とし、「予測不可能な状況に備えなければならない」とした。

トランプ大統領が相互関税の一部を90日間停止したことを受け、6月初旬に開催される次回会合までに、ECBは完全な明確さを得られないとも述べた。

声明は、ディスインフレのプロセスが順調に進んでいるとのガイダンスを維持した。

ラガルド総裁は、ユーロの急激な上昇に言及し、インフレに下押し圧力をかける可能性があるという認識を示した。

<市場はあと2、3回の利下げを予想>

ラガルド総裁はECBの次の動きについてほとんど手がかりを与えなかったものの、関係筋はロイターの取材に対し、6月の理事会で追加利下げが決定される可能性はなお高いとの見方を示した。利下げの一時停止が決定されるのは、貿易を巡る緊張が大幅に緩和された場合のみとしている。

市場でも、ラガルド総裁は成長リスクを警告し、一段の金融緩和が必要との見解を示したと受け止められた。ECBの政策金利がターミナルレート(最終到達点)に達するまで、あと2回、もしくは3回の利下げが実施されるとの見方が織り込まれている。

INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏は「ECBの切迫感は明らかに高まっている」とし、「一段の利下げが決定されると確信している」と述べた。同時に「利下げだけでユーロ圏経済を、現在見られている歴史的な変化と課題から守ることはできないということを誰もが理解しなければならない」とした。

コメルツバンクのエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏は「あと2回の利下げで政策金利は1.75%まで引き下げられる」と予想。ただ、トランプ大統領が一段と高い税率での相互関税を恒久的に導入すれば、一段の利下げが予想されるとした。

ロイター
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