ニュース速報

ビジネス

民間による余剰LNG確保へ、基金などの仕組み確立へ=経産省

2022年12月05日(月)19時29分

経産省は5日の審議会で、供給途絶リスクがある事業者へ液化天然ガス(LNG)を供給できるよう、有事に備え民間企業による余剰LNG確保の仕組みを確立する方針案を示した。写真はLNGタンカー。千葉・富津で2017年撮影。(2022年 ロイター/Issei Kato)

[東京 5日 ロイター] - 経産省は5日の審議会で、供給途絶リスクがある事業者へ液化天然ガス(LNG)を供給できるよう、有事に備え民間企業による余剰LNG確保の仕組みを確立する方針案を示した。今回の議論を踏まえ、月内の基本政策分科会で報告し、今後のエネルギー政策へ反映する。

経産省が審議会で示した「戦略的余剰LNG」の確保案では、まず独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に基金を設置する。その上で、要件を満たす民間企業を募り、承認された民間企業は中期や長期契約により余剰のLNGを確保し、平時には海外市場や国内事業者へ販売できるが、LNG途絶などの有事には、経産省が指定する国内事業者へ販売する。

この時の取引で生じる損失はJOGMECにある基金から補填し、利益が出たときには基金へ利益を還元する仕組み。

予算の制約がある中で、20年中ごろまでは長期契約の締結が難しくなっていることを踏まえて、まずは短期の契約を締結し、LNG需要が伸びる冬季に月当たり最低1カーゴではじめ、中長期的には冬季に限らず月1カーゴ、年間で12カーゴの運用を目指す。

石油のように長期間タンクに置いた備蓄が困難というLNGの性質を踏まえて、これまでも非常時を想定した国による調達の仕組みを導入しているが、普段から民間の活用能力を生かしてLNGを確保し有事に備えるのが狙い。

ロシアの石油・天然ガス開発プロジェクトであるサハリン2は日本のLNG輸入の約9%を占め、新会社への移行が順調に進んでいるものの、供給途絶リスクはぬぐい切れない。またマレーシアのペトロナス社が土砂崩れによるパイプラインからのガス漏洩で不可抗力による(フォースマジュール)供給停止を日本の販売先に通知するなど、LNGの調達環境は不確実性が高まっている。

経産省によると、こうした環境下で、各企業で複数国から円滑にLNGを調達することの難しさや緊急時の対応への準備、LNGの取り扱い量や経験の差など、エネルギーの安定供給の観点からの課題が出てきているという。

審議会の委員からはエネルギーの安定供給の確保の観点から評価できるとの声が上がる一方で、民間企業のインセンティブなく協力を求めるのは株主への説明責任も含め筋が通らないといった指摘もあった。

経産省からは、余剰の調達により上流の権益の交渉において数量面で有利に働くといった点やLNGの購入時のバーゲニングパワーにつながるといった点が挙がったが、引き続きの検討事項とされた。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元に現れた「1羽の野鳥」が取った「まさかの行動」にSNS涙
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中