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日銀、中短期金利重視の緩和強化検討へ 具体策も議論=関係筋

2016年09月09日(金)18時07分

 9月9日、日銀が9月20─21日に議論する総括検証を踏まえ、金融機関の収益減や生保・年金の運用難など副作用の要因になっている利回り曲線(イールドカーブ)の平たん(フラット)化の修正策を検討することが分かった。写真は日銀本店。7月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

[東京 9日 ロイター] - 日銀は9月20─21日に議論する総括検証を踏まえ、金融機関の収益減や生保・年金の運用難など副作用の要因になっている利回り曲線(イールドカーブ)の平たん(フラット)化の修正策を検討する。

弊害が目立つ超長期金利の大幅低下に比べ、景気刺激効果の高い中期金利などの抑制を重視。緩和強化を前提に国債買い入れ手法の工夫や、マイナス金利の深掘りなどが議論の対象になるもようだ。複数の関係筋が明らかにした。

イールドカーブ・フラット化の修正を目指すのは、今年1月のマイナス金利政策導入以降、量的・質的金融緩和(QQE)による国債買い入れとの組み合わせによって、想定以上にフラット化が進行。期間によっては副作用も顕在化し始めたためだ。

黒田東彦総裁は5日の講演で、マイナス金利と国債買い入れの組み合わせがイールドカーブ全体を押し下げたと分析。

貸出金利など企業・家計の資金調達コストという効果を強調する一方、金融機関収益の減少を通じて金利低下効果が減衰する可能性や、年金・保険の運用利回り低下などに伴う「広い意味での金融機能の持続性に対する不安」という副作用に言及し、マイナス金利付きQQEの推進はイールドカーブと金融仲介機能への影響を踏まえて判断していく必要性を強調した。

日銀内では、期間に応じた利回り押し下げの効果と副作用の分析も進んでいるもよう。景気を過熱も引き締めもしない中立金利(均衡実質金利)の水準と比べて押し下げる場合、金融機関の貸し出し期間や需給ギャップへの影響などの観点から、年限1年や3─5年など10年以下の短期・中期金利の引き下げが相対的に効果的で、超長期債の買い入れによる景気刺激効果が限定的との意見に傾きつつある。

桜井真審議委員は2日のロイターとのインタビューで、イールドカーブのフラット化によって「いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」とし、「本来、教科書的なイールドカーブの姿はあるわけであり、それを含めていろいろなことを考えていく」と述べている。

だが、イールドカーブの形状修正をどのように実現するかは難題だ。技術的な対応を含めた国債買い入れの修正や、短期金利のさらなる低下を促すマイナス金利の深掘りなどが検討対象になるもよう。

ただ、現実にこうした手法でイールドカーブが、スティープ化するのか日銀内にも様々な見通しが併存しているもようだ。

また、イールドカーブの形状修正は、国債買い入れのあり方全般に直結する可能性があり、9人の政策委員の間で見解の相違が大きいとみられている。

このため具体的な政策対応は、依然として極めて流動的な状況だ。

一方、首相ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与がロイターとのインタビューで提案した外債購入に関しては、中曽宏副総裁が8日、記者団に対して為替安定の外国為替売買は財務省の所管であると指摘。日銀による外債購入の議論は、目的を知らないのでコメントしないと語った。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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